でん粉粕中に存在するジャガイモそうか病菌の飼料利用場面における動態

[要約]

でん粉粕中のジャガイモそうか病菌はサイレージ発酵過程および牛消化管内で死滅する。その排泄物の堆肥化過程ではさらに熱により殺菌されるため、土壌に還元しても、そうか病の発生原因となる可能性は極めて小さい。

[キーワード]

ジャガイモそうか病菌、でん粉粕、サイレージ

[担当] 道立畜試・環境草地部・畜産環境科、十勝農試・生産研究部・病虫科
[連絡先] 電話 0156-64-5321,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・畜産草地
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]
ばれいしょでん粉の製造工程で発生するでん粉粕にはジャガイモそうか病菌が含まれ場合が多く、このことがでん粉粕の飼料利用拡大を妨げる一因となっている。そこで、でん粉粕の飼料利用場面(サイレージ発酵、牛消化管内および堆肥化過程)におけるそうか病菌の動態を明らかにし、でん粉粕サイレージの利用拡大に向けた知見を得る。
[成果の内容・特徴]
  1. でん粉粕中のそうか病菌はサイレージ発酵過程で死滅する。そうか病菌は貯蔵温度が高いほど短期間で検出限界以下となり(表1)、4℃・29日間、15℃・22日間または25℃・7日間発酵させたでん粉粕サイレージを土壌に混合してばれいしょを栽培してもそうか病の発病はみられない(表2)。
  2. カビ抑制や栄養価改善を目的としたでん粉粕への適切な尿素添加(表面添加:100g/平米、混合添加:0.5%)、あるいは水分調整を目的としたビートパルプの添加はサイレージ発酵過程でのそうか病菌に対する殺菌効果に影響を及ぼさない。
  3. そうか病菌を接種した飼料、またはそうか病罹病いも由来のでん粉粕を給与した牛のふん便からそうか病菌は検出されない。このふん便を堆肥化後、土壌に施用してばれいしょを栽培しても、そうか病の発病は認められない(表3)。
  4. 第一胃内容液(pH6〜7)中ではそうか病菌に顕著な菌数変化は見られないが、十二指腸内容液(pH2.4)中では指数関数的に減少する(表4)。
  5. そうか病罹病いも由来でん粉粕とふん尿の混合物を堆肥に埋設し、50℃・5日以上の発酵熱に曝さらされた試料からそうか病菌は検出されない。これを土壌と混和してばれいしょを栽培してもそうか病の発病は認められない。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本成果は、でん粉粕の飼料利用場面におけるジャガイモそうか病菌の畑地への拡散防止対策として活用できる。
  2. ジャガイモ塊茎褐色輪紋病の病原ウイルスを媒介するジャガイモ粉状そうか病菌は、耐久体を形成し他の病原菌と比較して熱などに対する耐久性が高い恐れがあり、本成果の処理条件での消長は不明なため、でん粉粕を給与した牛のふん尿堆肥は当面畑地への還元を避けて草地に還元し、同菌の拡散防止に努める。
[具体的データ]

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 道内農産副産物を利用した資源循環型畜産技術の開発 2)でん粉粕の畜産的利用におけるそうか病菌の動態解明と伝搬防止技術の開発
予算区分 外部資金(高度化事業)
研究期間 2004〜2006年度
研究担当者 湊啓子、清水基滋
発表論文等 湊・清水(2006)日本草地学会誌 52別:378-379