乳用種肥育牛に対する育成・肥育前期の飼料給与法

[要約]

育成期に乾草摂取量を高めつつ肥育前期へ移行することで、肥育後期の濃厚飼料摂取量を高く維持し、良好な肥育成績が得られる。牧草サイレージは、育成期と肥育前期の粗飼料として利用できる。

[キーワード]

乳用種去勢牛、粗飼料、肥育成績、飼料給与基準、牧草サイレージ

[担当] 道立畜試・家畜研究部・肉牛飼養科
[連絡先] 電話 0156-64-5321,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・畜産草地
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
乳用種肥育牛では育成期から肥育前期にかけて粗飼料摂取量を増加させ強健な内臓をつくり高い増体を確保することが重要である。そこで、乳用種去勢牛に対する粗飼料摂取量の割合を高めた飼料給与基準を示すため、濃厚飼料の摂取量を制限し粗飼料を自由採食した条件下で、育成期および肥育前期の飼料給与水準を明らかにする。また、育成期と肥育前期の粗飼料として牧草サイレージの利用について検討する。
[成果の内容・特徴]
  1. 育成期における濃厚飼料給与量を慣行量の約90%に抑えて乾草摂取量を増加させる(濃厚飼料A90%区)と、慣行量の濃厚飼料を給与する場合(濃厚A100%区)や慣行量の約70%に制限する場合(濃厚A70%区)より、肥育後期の濃厚飼料摂取量を高く維持し、優れた増体量および枝肉成績となる(表1 試験A)。
  2. 育成期に慣行量の濃厚飼料を給与しても、肥育前期の濃厚飼料給与量の増給速度を穏やかにすることで、肥育成績は濃厚B90%区より良好となる。(表1 試験B)。
  3. これらの成績に基づき、乳用種肥育において育成期・肥育期に乾草を多給し、肥育成績の向上を図るための月齢別飼料給与基準は、表2のように提唱される。
  4. 育成期・肥育前期に濃厚飼料給与量を慣行量の約90%を給与することで牧草サイレージ摂取量を増加させた群(サイレージH区)と慣行量を給与しサイレージの摂取量を抑えた群(サイレージM区)に分けて肥育したが、両区の増体量に差が示されなかったことから、牧草サイレージ゙は育成期と肥育前期の粗飼料として利用できる(表3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本データは、乳用種肥育における粗飼料多給技術を拡大する上で活用される。
  2. 提示した月齢別飼料給与量は、乾草と濃厚飼料の分離給与方式における基準である。
  3. 牧草サイレージから他の粗飼料への切り換えには、一定の馴致期間をかけて徐々に行うことが望ましい。
[具体的データ]

 

 

 

[その他]
研究課題名 乳用種去勢牛の育成・肥育における粗飼料給与法の確立
予算区分 民間共同
研究期間 2004〜2006年度
研究担当者 斉藤利朗、大井幹記、佐藤幸信、杉本昌仁、齋藤早春
発表論文等