アイヌワカメに含まれる機能性成分の鶏卵および鶏肉への移行

[要約]

アイヌワカメから抽出した脂溶性成分の添加によって、鶏卵に機能性成分が移行し蓄積するだけでなく、鶏の自然免疫機能の向上の可能性がある。熱水処理乾燥アイヌワカメ粉末5%添加は、鶏卵への機能性成分の移行は期待できないが、鶏の自然免疫機能向上の可能性がある。

[キーワード]

アイヌワカメ、鶏卵、機能性成分、自然免疫、脂溶性成分

[担当] 道立畜試・家畜研究部・中小家畜飼養科
[連絡先] 電話 0156-64-5321,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・畜産草地
[分類] 研究・参考

[背景・ねらい]
未利用海藻であるアイヌワカメには、生理活性作用のあるω3系列脂肪酸と高コレステロール障害を抑制するフコステロールおよび抗肥満効果が期待されるフコキサンチン等の脂溶性の機能性成分が含まれている。アイヌワカメの乾燥粉末、熱水処理乾燥粉末および抽出した脂溶性成分を飼料に添加し、不断給餌条件下で、これらの機能性成分が鶏卵及び鶏肉中へ移行する可能性について調査する。
[成果の内容・特徴]
  1.  乾燥アイヌワカメ粉末の添加では、高い塩分濃度の影響により飼料摂取量が低下し、産卵性が悪化した。また、機能性成分の鶏卵への移行は認められない。
  2.  塩類を含む水溶性成分を除去した熱水処理乾燥粉末の添加では、アイヌワカメの添加量が増えるに従い飼料摂取量が少なくなる傾向がみられる。
     添加による鶏卵への機能性成分の移行は認められないが免疫賦活作用を表す血液中の偽好酸球の化学発光能・マクロファージの走化性が5%添加で高くなり、鶏の自然免疫機能の向上の可能性がある。
  3.  アイヌワカメから抽出した脂溶性成分の添加では、鶏卵中に生理活性作用のあるω3系列脂肪酸の1つであるドコサヘキサエン酸(DHA)とフコステロールやフコキサンチンの代謝産物と考えられるフコキサンチノールが増加・蓄積し、機能性成分の移行が認められる(図1)。また、脂溶性成分3%添加でも偽好酸球の化学発光能・マクロファージの走化性が有意に高くなり、鶏の自然免疫機能の向上の可能性がある。(表1)。
     しかし、鶏肉(皮なしもも肉)は、添加による色調、ω3系列脂肪酸量およびコレステロール量の変化やフコステロールやフコキサンチン関連成分の蓄積が検出されず、機能性成分の移行は認められない。
[成果の活用面・留意点]
  1. アイヌワカメを含む未利用海藻の機能性成分に関する研究の基礎資料となる。
  2. 本試験における脂溶性成分に関する成績は、実験室レベルで効率的な抽出ができる有機溶媒を使った手法で調製した脂溶性画分で得られたものである。
[具体的データ]

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 未利用海藻の鶏飼料化による機能性成分の鶏卵・鶏肉への濃縮に関する基礎研究
予算区分 道費
研究期間 2005〜2006年度
研究担当者 山田 渥、國重享子、戸苅哲郎、大原睦生、小関忠雄、菅原 玲(釧路水試)、宮崎亜希子(釧路水試)、北川雅彦(釧路水試)、飯田訓之(釧路水試)
発表論文等