放牧は牛乳のCLA、ビタミンE、β−カロテンを高める |
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[要約] |
牧草は牧草サイレージに比較して、多価不飽和脂肪酸を約3倍含む。放牧草を充分に摂取した牛乳は、「黄色みが強い」、「ビタミンEとβ-カロテンが多い」に加えて「CLA(共役リノール酸)が多い」特徴が付加される。CLAが多い特徴はチーズにも維持される。 |
[キーワード] |
放牧草、脂肪酸、放牧時間、CLA(共役リノール酸)、牛乳 |
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[背景・ねらい] |
放牧草の利用が牛乳中の共役リノール酸(CLA)を増加させることが注目されている。しかし、放牧草の品質、放牧時間等の管理条件、併給飼料給与方式との関連は明らかでない。そこで、CLAの原料物質とされる放牧草が含む多価不飽和脂肪酸量と変動要因、放牧時間及び放牧草摂取量と乳脂肪中のCLA割合の関係を明らかにする。また、放牧草の利用が生産される生乳と乳製品のCLAやβ-カロテン等の栄養・機能性成分に与える影響、生乳中CLAに対するチーズへの加工処理の影響を明らかにする。 |
[成果の内容・特徴] |
- チモシー主体放牧草の総脂肪酸含量の平均値は2.53%で、脂肪酸組成の季節的な変動は小さく、多価不飽和脂肪酸が約77%を占める。放牧草の多価不飽和脂肪酸含量は1.95%で一番草サイレージの0.61%の約3倍である(表1)。
- 乳脂肪中のCLA割合は、十分な草量を準備した4時間以上の放牧時間を確保することで放牧未実施農場に比較して有意に上昇する。また、放牧時間が7時間程度までは明らかな上昇傾向を示すが、8時間以上では放牧時間の増加による上昇傾向は緩慢となる。同じ放牧時間であっても併給粗飼料の給与方法によりCLA割合が異なる傾向にある(図1)。
- 放牧草を充分に採食できる条件で生産された放牧期の牛乳は、他の粗飼料を利用して生産された牛乳に比較して、「色彩値b*が大きく黄色みが強い」、「ビタミンEとβ-カロテンが多い」、「乳脂肪中のCLA割合が多い」という特徴が付加される。とくに、乳脂肪中のCLA割合は、放牧未実施農場の平均値0.43%に比較して約3倍の1.41%と高い(表2)。
- 放牧を行う農家工房で製造されたチーズの脂肪酸中のCLA割合は、放牧期間(5月〜10月)に高く、放牧期間中の乳脂肪中のCLA含量が高いという特徴は、チーズ製造工程を経ても維持される(図2)。
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[成果の活用面・留意点] |
- 放牧草を利用して生産された生乳の特色は、地域特産牛乳・乳製品の特徴付けに利用できる。
- 本成果で示す4時間程度の放牧では、一頭当たり割り当て草量として生草70kg程度を用意する必要がある(4時間程度の放牧による乾物摂取量5kg/頭、放牧草の利用率40%、放牧草の乾物率18%として算出)。
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[具体的データ] |
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[その他] |
研究課題名 |
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放牧牛乳の機能性成分向上技術の開発、 持続型草地畜産展示牧場における放牧主体畜産物の成分特性の評価 |
予算区分 |
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交付金プロ(集約放牧)、民間共同 |
研究期間 |
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2003〜2007年度、2006年度 |
研究担当者 |
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高橋雅信、昆野大次、西村和行、本郷泰久 |
発表論文等 |
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