牧草サイレージ給与時の乾乳牛の糞尿量・窒素排泄量と乳牛のメタン発生量の低減

[要約]

サイレージを給与されている乾乳牛は窒素利用効率が悪く、飼料摂取量が低いにも係わらず泌乳牛と同等の糞尿窒素量を排泄している。また、TMR飼料を給与している泌乳牛のメタン発生量は飼料の消化性を向上させることにより低減が可能である。

[キーワード]

乳牛、糞尿量、窒素排泄量、メタン発生量

[担当] 根釧農試・研究部・乳牛飼養科
[連絡先] 電話 0153-72-2036,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・畜産草地
[分類] 研究・参考

[背景・ねらい]
糞尿利用・処理施設の設置および環境容量の設定などの基礎的なデータとなる糞尿量および糞尿窒素量は、泌乳牛については示されているが、乾乳牛については示されていない(日本飼養標準、1999)。また、家畜の消化管内発酵に伴うメタン発生量については、飼養管理条件を考慮した排出係数の設定に必要な研究データが不足していることが指摘されている(日本国温室効果ガスインベントリ報告書,2006)。そこで、サイレージ給与時の乾乳牛の糞尿量、糞尿窒素排泄量についてとりまとめるとともに牧草サイレージを主体とするTMR給与時における乳牛のメタン発生量の低減方法について提示する。
[成果の内容・特徴]
  1. 1番草牧草サイレージを給与した乾乳牛の糞尿量は47.2kg/日、糞尿窒素量は205.2g/日、摂取窒素に対する尿窒素割合は34.3%と高い(表1)。1番草牧草サイレージにデンプンを添加することにより、尿窒素分配割合は34.3%から24.1%に低下し、体蓄積窒素割合が増加する。サイレージのみ給与されている乾乳牛は窒素の利用効率が悪く、尿窒素として排出される割合が高い。
  2. 尿量はTDN/CPおよびカリウム摂取量との間に強い相関が認められ、尿量とカリウム摂取量との相関係数は0.75と強い関係が認められる(図2)。特に、2番草および3番草のイタリアンライグラスサイレージは飼料中のカリウム含量が高く(3.71%、3.82%)、尿窒素量は他のサイレージと同等であるが、尿量は10kg/日以上多い(表1)。
  3. サイレージ給与時の乾乳牛の乾物摂取量は10.5〜14.6kg/日、メタン発生量は285.2〜396.5L/日であった(表1)。また、サイレージを給与した乾乳牛のメタン発生量は可消化NDF摂取量と強い正の相関が認められるが(図3)、一方、牧草サイレージ主体TMR給与時における泌乳牛のメタン発生量は、TMRの乾物消化率と負の相関が強い。
  4. メタン発生量に対するTMRの乾物消化率の回帰式から、TMR飼料の乾物消化率が1%に向上すると乾物摂取量あたりのメタン発生量は約1%低減されることが推定される(図4)。メタン発生量の低減には、消化性が良い牧草サイレージをベースとするTMRの給与が有効である。
[成果の活用面・留意点]
  1. サイレージ給与時の乾乳牛の糞尿量・糞尿窒素量の原単位として活用する。
  2. TMR給与時における泌乳牛のメタン発生量低減を目標とした飼養管理に活用できる。
[具体的データ]

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 乳牛における窒素排泄量およびメタン産生量の低減
予算区分 道費(農政部事業)
研究期間 2004〜2006年度
研究担当者 糟谷広高、大坂郁夫
発表論文等