穂発芽耐性に優れ、かび毒汚染の少ないパン用春まき小麦「北見春67号」 |
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[要約] |
「北見春67号」は「ハルユタカ」、「春よ恋」に比べ穂発芽耐性が優れ、赤かび病菌による子実中デオキシニバレノール濃度が低い。収量は「ハルユタカ」より多く、「春よ恋」並かやや多い。製パン性は「ハルユタカ」より優れる。 |
[キーワード] |
春まき小麦、穂発芽耐性、デオキシニバレノール、多収、大粒、製パン性 |
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[背景・ねらい] |
春まき小麦は、国産パン用小麦に対する需要の高まりもあって、作付面積が近年増加傾向にあるが、穂発芽や赤かび病の多発、およびこれら被害粒混入による規格外の発生などの生産不安定要因は解消されていない。2002年に赤かび病菌の産生するかび毒の一種であるデオキシニバレノール(DON)について暫定基準値(1.1ppm)が定められ、これを超える生産物の流通ができなくなった。また、登熟期が高温に推移する地域では、細麦が発生しやすく、粒厚選別時の歩留の低下や落等につながっている。これらのことから、春まき小麦の安定生産のためには、穂発芽耐性に優れ、子実のDON汚染が少ない大粒品種の普及が重要となっている。 |
[成果の内容・特徴] |
- 「北見春67号」は、1994年度に、良草型の「C9304」と良質の「Katepwa」のF1に穂発芽性"難"の「春のあけぼの」を人工交配し、以降、選抜、固定を図ってきたものである。
- 穂発芽性は「ハルユタカ」、「春よ恋」より優れる“難”である(表2,図1)。
- 赤かび病発生時のデオキシニバレノール濃度は「ハルユタカ」、「春よ恋」より低い(表2、図2)。
- 千粒重は「ハルユタカ」、「春よ恋」より大きい(表1)。
- 成熟期は「ハルユタカ」より1日、「春よ恋」より2日程度遅い(表1)。
- 収量性は「ハルユタカ」より優り、「春よ恋」並かやや優る(表1)。
- 粗蛋白質含量は「ハルユタカ」、「春よ恋」よりやや低い(表1)。
- 製パン性は「ハルユタカ」より優れる(表2)。
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[成果の活用面・留意点] |
- 北海道の春まき小麦栽培地帯に適応する。普及見込み面積は1,500haである。
- 粗蛋白質含量がやや少ないため、開花期以降の尿素葉面散布を基本とする。
- 赤かび病発生時のDON汚染は少ないが、赤かび病抵抗性は“中”であるため、適切な防除に努める。
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[具体的データ] |
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[その他] |
研究課題名 |
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寒地向け秋播き、高品質めん用、安定多収の小麦品種の育成及び寒地向け春播き、高品質パン用、安定多収の小麦品種の育成 |
予算区分 |
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指定試験、道費、受託 |
研究期間 |
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1994〜2006年度 |
研究担当者 |
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吉村康弘、中道浩司、小林聡、西村努、池永充伸、佐藤奈奈、佐藤導謙、荒木和哉、柳沢朗、今友親、吉田俊幸、土屋俊雄、白井滋久、鈴木孝子、白井和栄、奥村理 |
発表論文等 |
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