てんさい直播栽培における風害およびソイルクラストによる初期生育障害の軽減対策

[要約]

てんさい直播栽培において、麦類を被覆作物とする整地前散播方式および畦間条播方式が風害軽減効果がある。ソイルクラスト対策はワイヤーツース型ソイルクラストクラッシャが適し、足跡が残らない固さになる前に施工する。

[キーワード]

テンサイ、直播栽培、風害、被覆作物、ソイルクラスト

[担当] 十勝農試・生産研究部・栽培システム科、中央農試・生産研究部・機械科
[連絡先] 電話 0155-62-2431,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・畑作
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
 てんさい直播栽培は、生育初期の風害や出芽時のソイルクラストによる障害を受けやすいことから、これらの軽減対策が求められている。
 そこで、風害軽減のために麦類を被覆作物とした直播ほ場での栽培方法、ソイルクラスト形成時のソイルクラストクラッシャの利用法について検討する。
[成果の内容・特徴]
  1. 風害軽減効果のある麦類の栽培方法は、整地前散播方式および畦間条播方式がある(表1)。整地前散播方式は、麦類散播に既存の機械が利用でき、畦間条播方式は、麦類を播種するための施肥カルチベータの改良が必要であるが、てんさい本葉抽出始以降の麦類の葉面積は整地前散播方式より多い。コストの増加はてんさい生産費の3〜6%である。
  2. てんさい直播ほ場からの土壌飛散量は、麦類の葉面積が増えるにつれて減少する(図1)。また、麦類の葉面積が多いほど、飛散した土粒子からてんさいを保護する効果も認められ、麦類の葉面積が200cm2/m2以上の確保が風害軽減の目安と想定される。
  3. クラスト破砕程度およびてんさいの出芽率から、ワイヤーツイス型ソイルクラストクラッシャの効果は高い(図2図3)。ただし、施工時期はソイルクラストが完全に形成される前(足跡が残らない固さになる前)が望ましく、高硬度のソイルクラストが形成されると、破砕は困難である。
  4. ソイルクラストクラッシャ無施工区では、図3に示すように、砕土性:「細」(砕土率82〜87%)は、「中」(砕土率63〜70%)よりてんさい出芽率が低く、ソイルクラスト形成の影響を受ける。土壌表面の砕土を細かくしすぎないことが、ソイルクラスト形成を軽減する方法として効果がある。
[成果の活用面・留意点]
  1. 風害軽減のための麦類の利用は、予防的効果であるので、播種方法、麦類の選定や播種量については、コストと期待される効果を考慮して採用する。
  2. 砕土率が高いほど飛散しやすい土粒子の重量が多いことから、出芽率の確保と風害軽減のための砕土整地法の検討が必要である。
  3. ソイルクラストの発生を軽減する対策は、有機物の継続的な施用による土づくりが最も重要である。
[具体的データ]

 

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 気象災害軽減による直播てんさいの初期生育安定化
予算区分 受託
研究期間 2004〜2006年度
研究担当者 大波正寿、稲野一郎、木村義彰、鈴木剛、梶山努、前野眞司、竹中秀行、白井和栄
発表論文等