大豆の花粉形成期における低温感受性とその評価法

[要約]

ダイズの生殖生長において、「花粉四分子期」(開花10〜14日前)と「開花直前」(開花1〜4日前)に低温感受性が高まる。また、「花粉四分子期」の低温感受性には品種間差があり、異常花粉率を指標として遺伝資源の簡易評価が可能である。

[キーワード]

ダイズ、低温感受性、耐冷性、開花期、花粉形成期、花粉四分子、受精

[担当] 十勝農試・作物研究部・大豆科
[連絡先] 電話 0155-62-2431,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・畑作、作物
[分類] 研究・参考

[背景・ねらい]
大豆生産の大きな不安定要因である障害型冷害について、開花直前からの低温による着莢障害については基礎的知見が蓄積され、その品種間差の検定方法も確立されている。しかし、より早い時期の低温の影響の詳細は未解明である。花粉形成期の低温感受性が高まる期間など基礎的な知見を明らかにし、さらに遺伝資源の花粉形成期耐冷性の評価方法を開発する。
[成果の内容・特徴]
  1. 個々の花で見た場合、「花粉四分子期前後」(開花10〜14日前)と「開花直前」(開花1〜4日前)の2つのステージで低温感受性が高まり、受精莢率の低下が観察される(図1A)。また、花粉四分子期前後の低温によって、形態が異常な花粉粒が発生した(図1B)。
  2. 群落で見た場合、開花のピークの約16日前から「花粉四分子期前後」の低温感受性期間が始まり、引き続き「開花直前」の低温感受性期間が存在する(図2)。
  3. 花粉形成期耐冷性に品種間差があり開花期耐冷性の評価とは必ずしも一致しない(表1)。
  4. 7日間の低温処理終了後、7〜11日後に開花した花(低温処理の中心日から10〜13日後に相当)の異常花粉率を指標にして、多様な遺伝資源の花粉形成期耐冷性を簡便に評価できる。
  5. 国内外の多様な遺伝資源70点の中には花粉形成期耐冷性の品種・系統間差があり、北海道以外の遺伝資源の中にも北海道の耐冷性品種並のものも存在する(表2)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 大豆新品種育成事業において、花粉形成期耐冷性の検定と遺伝資源の探索に利用できる。
  2. 花粉形成期耐冷性が強いと評価される「十系952号」、「十系978号」を交配母本として利用できる。
[具体的データ]

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 「大豆の開花期高度耐冷性遺伝資源の探索」、「寒地北東部向け耐冷性、線虫抵抗性、機械化適性、高品質、多収の大豆品種の育成」
予算区分 ジーンバンク事業、指定試験
研究期間 2004〜2006年度
研究担当者 大西志全、白井滋久
発表論文等