小豆の抗酸化成分による生理調節機能の解析

[要約]

小豆エタノール抽出物は動物において血糖値上昇抑制、コレステロール値上昇抑制、血圧上昇抑制、血圧降圧効果がある。また、小豆煮汁加工飲料は人体において中性脂肪値を下げる傾向がある。これらの主成分であるポリフェノールの多くは、製アン過程において煮汁等に溶出する。

[キーワード]

小豆エタノール抽出物、小豆煮汁加工飲料、生理調節機能

[担当] 中央農試・基盤研究部・農産品質科、十勝農試・作物研究部・小豆菜豆科、帯広畜産大学・畜産科学科、青森県立保健大学大学院・健康科学研究科
[連絡先] 電話 0123-89-2585,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・畑作
[分類] 研究・参考

[背景・ねらい]
高齢化社会に向けて「予防医学」への関心が高まっており、生活習慣ならびに食習慣改善の重要性が指摘されている。そこで抗酸化活性を有するポリフェノールを主体とした小豆エタノール抽出物および小豆煮汁加工飲料を用いて、動物および人体において小豆が有する生理調節機能を生活習慣病予防の面から検討する。
[成果の内容・特徴]
  1. 健常マウスに小豆エタノール抽出物(ABE)を投与後、糖負荷試験を行うと、ABE投与群は無投与群と比較して血糖値の上昇が低く抑えられる(図1)。
  2. 健常ラットにABEを添加した高コレステロール飼料を与えると、ABE無添加高コレステロール飼料を与えた群と比較してVLDL+IDL+LDL値の上昇が抑制される(図2)。
  3. 自然発症高血圧ラット(SHR)にABEを投与したところ、収縮期血圧の上昇抑制効果(図3-A)および血圧降圧効果が認められた(図3-B)。
  4. 中性脂肪値が高めの人が小豆煮汁加工飲料を飲用すると、飲用前と比較してその平均値が低下する傾向が見られ(表1)、一方、中性脂肪値が正常な人ではそのような傾向は見られない。
  5. 製アン過程において、渋切り水および煮汁に原料豆のポリフェノールの約84%が含まれる(図4)。
  6. 以上の結果より、小豆エタノール抽出物および小豆煮汁加工飲料は生理調節機能を有することが期待でき、これらの主成分であるポリフェノールは、加工過程において煮汁等に溶出している。
[成果の活用面・留意点]
  1. 小豆が有する生理調節機能に関する研究の参考となる。
  2. 人体における生理調節機能の効果確認試験については、小豆煮汁加工飲料(1缶175gあたり105mgポリフェノールを含む)を1日3缶、4週間以上飲用した場合の結果である。
[具体的データ]

 

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 小豆の抗酸化成分の変動要因と生理調節機能の解明
予算区分 道費(豆基)
研究期間 2004〜2006年度
研究担当者 相馬 ちひろ、奥村 理、島田 尚典(道立十勝農試)、小嶋 道之(帯広畜産大学)、佐藤 伸(青森県立保健大学大学院)
発表論文等 小嶋ら(2006)日食工誌 第53巻7号:380-385
小嶋ら(2007)日食工誌 第54巻1号:50-53