農畜産加工副産物を原料とした酵母による機能性糖脂質の生産

[要約]

テンサイから砂糖を製造するときに副生するビートモラセスおよび生乳からチーズを製造するときに副生するチーズホエーを原料として酵母を培養することにより、機能性糖脂質であるセラミドおよびステリルグルコシドを大量に生産できる。

[キーワード]

ビートモラセス、チーズホエー、酵母、セラミド、ステリルグルコシド

[担当] 北海道農研・寒地バイオマス研究チーム
[連絡先] 電話 011-857-9260,電子メール seikajouhou@ml.affrc.go.jp
[区分] 北海道農業・畑作
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
テンサイから砂糖を製造するときに副生するビートパルプは、高価な機能性糖脂質セラミドの原料として利用できる(平成16年度技術参考)。一方、ビートモラセスや生乳からチーズを製造するときに副生するチーズホエーは、主成分が糖質で且つ液状であることから、微生物の培養原料に適している。そこで、これらを原料としてセラミド等の機能性糖脂質を合成する酵母を生産し、菌体から抽出した糖脂質を化粧品素材等に利用する技術開発を着想した。本研究では効率的な製造を目指すために、糖脂質蓄積能の高い酵母菌株の作出・選抜を行った。
[成果の内容・特徴]
  1. 酵母Saccharomyces kluyveriは、ビートモラセス中のラフィノースをグルコース、フルクトースとガラクトースにまで分解し、これらを栄養源として増殖する。微生物保存機関で保有のCBS4800を胞子分離することによって、親株よりもセラミド(図1)を高蓄積する半数体が多数得られる。このうちSP-25株のセラミド含量は0.59 mg/g菌体で、最も高蓄積する。
  2. 酵母Kluyveromyces lactisは、チーズホエー中のラクトースをグルコースとガラクトースにまで分解し、これらを栄養源として増殖する。K. lactisは乳製品中に多く検出され、それらの中にはセラミド含量や脂質組成に差異が見られる菌株が多数存在する(図2)。このうち日本産生乳から分離したK. lactis M-11株が最もセラミドを高蓄積し(0.71 mg/g菌体)、M-16株は血中脂質低下作用や発毛・育毛効果が期待されているステリルグルコシド(図3)を菌体内に1.3 mg/g蓄積する。
  3. 北海道で1年間に発生するビートモラセスおよびチーズホエー中の糖分から取得可能な菌体量を推定し、そこに含まれるセラミドを抽出・精製すると仮定すると表のように大量に生産できる。
[成果の活用面・留意点]
  1. 酵母の糖脂質の含量は、使用する菌株および培養条件によって変動する。
  2. K. lactis M-16株は当所および特許微生物寄託センター(寄託番号 NITE AP-228)で保有しており、許諾手続きを経て分譲が可能である。
[具体的データ]

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 寒地畑作物バイオマス資源の多段階利用技術の開発
課題ID 411-a
予算区分 異分野融合
研究期間 2002〜2006年度
研究担当者 高桑直也、斎藤勝一、中司啓二、田村雅彦(日本甜菜製糖)、元島英雅(よつ葉乳業)、小野 治三郎(日本製粉)、間 和彦(日本製粉)、荒井威吉(新潟青陵大)、小田有二(帯広畜大)、大西正男(帯広畜大)
発表論文等 1) Tamura, M. et al. (2005) Food Biotechnol., 19(2), 95-105.
2) 高桑ら (2004) 農業および園芸, 79(1), 3-9.
3) 小田、大西 (2004) 特開2004-89047