葯培養による春まき小麦の半数体倍加系統作出の効率化

[要約]

交配当年度に葯培養再生個体を温室において養成し、これを次年度圃場に移植して栽培すると、従来の葯培養と比較して育種年限を1年短縮可能で、温室栽培の労力の軽減、種子の大量増殖、併せて圃場における予備選抜が可能となる。

[キーワード]

春まき小麦、葯培養、早期固定、育種年限短縮

[担当] 中央農試・基盤研究部・遺伝子工学科、細胞育種科
[連絡先] 電話 0123-89-2584,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・生物工学
[分類] 研究・参考

[背景・ねらい]
春まき小麦の葯培養による半数体育種では通常育種に比べ2年の育種年限の短縮が可能であるが、近年、赤かび病抵抗性系統等の開発が急務となり、さらなる育種年限の短縮が求められている。そこで、
1)これまで夏期に圃場で養成されたF1を用いて行われてきた春まき小麦の葯培養を冬期に温室において養成したF1でも実施できるよう検討する 
2)これまで葯培養再生個体の養成は温室内で行われてきたが、省力化のために圃場移植栽培を検討することによって春まき小麦の半数体育種の効率を向上させる体系を構築する。
[成果の内容・特徴]
  1. 冬期に葯培養を行うことによって培養効率は低下するが、植物体再生率の高い交配組合せを利用することによって作業上問題は生じないと考えられる(表1)。
  2. 葯培養再生個体は圃場に移植後正常に活着し、生育する。温室で養成する場合(表1)と比較すると、生育が旺盛で、採種粒数が多く(表3)、予備選抜と種子増殖を同時に行うことができる。これらの結果から、従来法に比べ、より低コストで効率良く半数体倍加系統を得られる。
  3. 夏期に交配したF1種子を冬期に温室で養成して葯培養し、再生個体を圃場で養成することにより(表4)、これまでの葯培養と比較して1年間、通常育種と比較すると3年間育種年限を短縮することが可能と考えられる。
[成果の活用面・留意点]
  1. 冬期の温室におけるF1養成により培養効率が低下する傾向があるので、葯培養を行う際は植物体再生率に優れた交配親を用いることが望ましい。
  2. 冬期の温室におけるF1養成では補光することが望ましい。
[具体的データ]

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 道産小麦の安全性・安定性向上試験
        1.赤かび病抵抗性強化とDON低減技術による安全性向上
        1)赤かび病抵抗性及びマイコトキシン産生抑制品種の開発促進
       民間流通に対応した高品質小麦の開発促進
        2.難防除病害抵抗性品種の開発促進
        1)赤かび病抵抗性系統の育成と対策
予算区分 受託
研究期間 2001〜2006年度
研究担当者 鈴木孝子、佐藤毅、佐藤導謙、神野裕信
発表論文等