Stvb-i候補遺伝子領域の形質転換によるイネ縞葉枯病抵抗性の付与 |
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[要約] |
イネ縞葉枯病抵抗性品種「St. No.
1」のゲノム断片約25kbを導入した組換え体は、イネ縞葉枯病に対して遺伝子供与親と同程度の抵抗性を示す。導入断片内の4予測遺伝子は、イネ縞葉枯病抵抗性遺伝子Stvb-i候補と推測され、既報の遺伝子とは相同性が低い。 |
[キーワード] |
水稲、イネ縞葉枯病、抵抗性、Stvb-i遺伝子、予測候補遺伝子 |
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[背景・ねらい] |
水稲のウイルス病害の一つであるイネ縞葉枯病は、稲作に多大な被害をもたらしてきた。本病の防除は、媒介昆虫を対象とした殺虫剤の施用や抵抗性品種の継続的作付け等の間接的方法によっている。本病に対する抵抗性遺伝子の一つであるStvb-i遺伝子は、インド型イネ品種「Modan」に由来し、40年近く安定した効果を維持しており、多くの抵抗性品種に導入されている。近年、本病の発生は上昇傾向にあり、この抵抗性を付与した新品種開発は現在も各地で進められている。しかし、本抵抗性遺伝子の実体および機能については不明であり、その解明等が求められている。そこで、本抵抗性遺伝子の単離およびその機作の解明を目指して、抵抗性を相補する組換え体を作出し、Stvb-i候補遺伝子を絞り込む。 |
[成果の内容・特徴] |
- イネ縞葉枯病抵抗性中間母本「St. No.
1」の第11染色体長腕のゲノム領域約25kb断片内には、縞葉枯病抵抗性遺伝子Stvb-iの候補予測遺伝子として4遺伝子ST55k05、06、07、08がある(図1)。
- 感受性水稲品種「ユーカラ」およびRIL484(「月の光」×「黄金晴」の近交系感受性系統)に当該ゲノム断片約25kbを導入した組換え系統は、イネ縞葉枯病に対し抵抗性を示し、その抵抗性の付与は原品種に左右されない(図2および表)。
- 付与された抵抗性は、組換え後代においても発現する(図2)。
- 組換えホモ系統の発病指数比は、抵抗性品種「月の光」よりも低く、極強の「St. No. 1」に近い(図3)。
- 4つのStvb-i候補遺伝子はいずれも既報の遺伝子とは相同性が低く、新規性が高い。
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[成果の活用面・留意点] |
- 今回作出した組換え系統は、抵抗性遺伝子Stvb-iの特定および抵抗性機構の解明の材料となる。
- 「Modan」に由来するイネ縞葉枯病抵抗性品種を交配育成する場合、抵抗性選抜DNAマーカーを利用して導入・固定するゲノム領域を上記に示した25kbにまで限定することが可能である。
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[具体的データ] |



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[その他] |
研究課題名 |
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食用稲における病害抵抗性の強化のための遺伝子単離と機作の解明 |
課題ID |
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221-f |
予算区分 |
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基盤、QTL遺伝子 |
研究期間 |
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2005〜2006年度 |
研究担当者 |
: |
早野由里子 |
発表論文等 |
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