催芽時食酢処理による水稲の褐条病防除対策 |
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[要約] |
循環式催芽器による催芽時の食酢50倍液処理は、イネ褐条病に対して安定して高い防除効果が得られる。浸種前の化学薬剤による種子消毒、温湯種子消毒と組合わせて使用でき、種籾の発芽や苗形質への影響も実用上問題ない。 |
[キーワード] |
イネ、褐条病、食酢、特定防除資材、催芽時処理、循環式催芽器 |
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[背景・ねらい] |
北海道で問題となる水稲の種子伝染性病害4病害のうち、褐条病に対しては、温湯消毒の効果は不安定で、また化学農薬による種子消毒も完全ではなく、種子予措および育苗管理時の対策が必要であるが、現状では徹底できていない。一方、催芽時食酢処理が褐条病に高い効果があることが富山県で示された。本処理には循環式催芽器を使用するため、良好な催芽も期待される。また食酢は特定防除資材であり有機栽培にも活用できる。そこで、現行の種子消毒処理と組合せた場合の防除効果と、種籾の発芽・苗立ちへの影響を検討し、催芽時食酢処理を北海道で実用化させる。 |
[成果の内容・特徴] |
- 催芽時の食酢25〜100倍液処理と、60℃10分間の温湯種子消毒、イプコナゾール・銅水和剤Fおよび銅・フルジオキソニル・ペフラゾエート水和剤DFの浸漬あるいは塗末処理との組合せ処理は、いずれも褐条病に対して高い防除効果が得られる(表1)
- 食酢100倍液処理は、褐条病に対し、現在指導されている化学農薬による種子消毒と蒸気催芽の組合せとほぼ同等の効果であり、食酢50倍液処理は、それに優る効果がある。25倍液処理は50倍液とほぼ同等の効果である(表1)。
- 食酢濃度が高まるにつれ、種子の発芽は遅延する。最も顕著であった食酢25倍液処理は、発芽率60%に達するまでに食酢処理なしと比べ10時間以上遅延する上(図1)、催芽が不揃いとなり、移植時の苗形質も劣る傾向である(表2、3)。発芽遅延による催芽の均一性低下を勘案すると、食酢濃度は出来る限り低い方が望ましいが、33倍よりも低い濃度では実用上問題がないと考えられる。
- 以上、褐条病に対する防除効果と、発芽や苗形質への影響に関する結果を総合すると、循環式催芽器による催芽時の食酢処理濃度は50倍とするのが妥当と考えられる。
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[成果の活用面・留意点] |
- 本成果は、水稲の褐条病に対する防除対策に活用する。
- 種子予措・育苗管理における耕種的対策は、催芽時(食酢処理時)に循環式催芽器を使用する以外は、「水稲の育苗期における細菌病の防除対策(平成8年)」に準拠する。
- 一度使用した食酢液は再利用しない。
- 本試験に用いた食酢は酸度4.2%の穀物酢である。なお、食酢は特定防除資材に指定されている。
- 本技術を用いる場合、種子消毒は化学農薬または温湯消毒により、従来通り行う。
- 催芽処理によって生じる廃液は、法令に従って適正に処理する。
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[具体的データ] |



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[その他] |
研究課題名 |
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循環式催芽機使用催芽時の食酢処理による病害防除 |
予算区分 |
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受託 |
研究期間 |
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2006年度 |
研究担当者 |
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白井佳代、小倉玲奈、佐々木亮 |
発表論文等 |
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