デオキシニバレノール汚染に対応した秋まき小麦の赤かび病の薬剤散布方法

[要約]

発病とデオキシニバレノール(DON)汚染の関係解明と薬剤評価の結果から秋まき小麦の赤かび病に対する薬剤防除対策として、効果の高い薬剤を開花始と1週間後の2回散布でDON汚染低減とMicrodochium nivaleによる減収被害に対応した防除が可能である。本成果によって従来の防除対策と比較して散布回数が1回削減される。

[キーワード]

小麦、赤かび病、デオキシニバレノール、薬剤防除、Fusarium graminearum、Microdochium nivale

[担当] 十勝農試・生産研究部・病虫科
[連絡先] 電話 0155-62-2431,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・生産環境
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
秋まき小麦の赤かび病防除およびDON汚染低減対策として開花始から1週間間隔で3回の薬剤散布を指導している。しかし、近年消費者の食の安全に対する関心が高まり、農薬の使用回数を削減する栽培技術が求められていることから、より効率的な赤かび病防除技術の確立をめざし、DON汚染過程の解明に基づく薬剤散布回数の検討、生産現場で効果の高い薬剤選択をするための各薬剤の評価を行う。
[成果の内容・特徴]
  1. 見かけ上健全な小麦粒(外観健全粒)からもDONが検出される。発病穂内の外観健全粒からはFusarium graminearum(F.g)が高頻度で分離されDON濃度も高い。これに対し健全穂内ではF.gの分離率、DON濃度ともに低く、外観健全粒のDON汚染の主体は発病穂内の2次感染によるものである(図1)。
  2. テブコナゾール水和剤F(2000倍)を開花始から1週間間隔で2〜4回散布すると、2回散布でDON濃度が低下し、十分な防除効果が得られる(表1)。
  3. 発病穂に対し追加(3〜4回)散布をしても、発病小穂数、外観健全粒からのF.gの分離率は低下せず、また外観健全粒中のDON濃度 に有意差はみられず、十分な効果は得られない。(表2)。
  4. 赤かび粒率、DON濃度および外観健全粒のDON濃度に対する効果を基に薬剤の防除効果を評価すると、5薬剤で高い効果が認められ、このうち2薬剤はMicrodochium nivaleに対しても効果が高い(表3)。
  5. 上記2.3.からDON濃度低減のためには、散布回数を多くするより、小麦の感受性が高い開花時期の感染を効率的に抑えるため適期に散布し、赤かび病の発病穂率を低く抑えることが重要である。
  6. 以上のことから、これまでの指導より薬剤散布回数を1回削減した、秋まき小麦での赤かび病薬剤防除方法を示す(表4)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 全道の秋まき小麦の赤かび病に対する薬剤防除対策として活用する。
  2. 本成績は赤かび病抵抗性"やや弱"の「ホクシン」による試験である。
  3. 薬剤耐性菌の出現を考慮し、同系統の薬剤の連用を避ける。
  4. DONの暫定基準値あるいは農産物規格既定の赤かび粒率の基準値に対応するため、耕種的対策や調製を併せて行う。また、DONの自主検査は必須である。
[具体的データ]

 

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 栽培技術等による赤かび病カビ毒のリスク低減化技術の開発
予算区分 受託
研究期間 2004〜2006年度
研究担当者 小澤徹・安岡眞二・清水基滋
発表論文等