デオキシニバレノールおよび農産物検査規格に対応した小麦調製法

[要約]

赤かび粒率の基準値を目安に比重選別を行えばデオキシニバレノールの基準値および他の農産物検査規格も満たすことができる。安定した調製を行うためには整粒割合による仕分け・ロット形成が有効である。

[キーワード]

比重選別機、デオキシニバレノール、赤かび粒、調製、農産物検査規格

[担当] 中央農試・生産研究部・機械科、病虫科
[連絡先] 電話 0123-89-2287,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・生産環境
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
小麦の調製に利用される比重選別機は、選別機出口の選別具合を目視により判断して製品として回収される小麦とそうでない小麦を分ける仕切板の位置を調整するが、カビ毒の一種であるデオキシニバレノール(以降DONとする)は目視では判断できない。このため、本試験ではDON濃度の暫定基準値および平成15年産より改訂された赤かび粒率の新基準値に対応し、規格内小麦を出荷するための比重選別機利用法を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
  1. DON濃度0.34〜4.23ppm、赤かび粒率0.07〜1.87%、容積重805〜860g/lの履歴の異なる小麦を対象にした比重選別結果から、いずれの原料においても赤かび粒の混入割合の基準値が比重選別機の製品口流量割合を決定する制限要因であるといえる(表1)。このことから、赤かび粒が混入している原料の比重選別では、製品口に回収される小麦の赤かび粒率が基準値を満たしていることを目安にして調製を行えば、DON濃度およびその他の基準値を満たすことができる。
  2. 赤かび粒のDON濃度は95〜160ppmと非常に高く、その他被害粒や未熟粒のDON濃度も比較的高い。また、整粒のDON濃度は容積重(比重)が小さいほど高い傾向にある(表2)。これらのことから、DON濃度低減には赤かび粒>その他被害粒>比重の小さい整粒、の順に原料に応じて選別することが効果的である。赤かび粒の混入がなくても、被害粒や開溝未熟粒が混入している場合、比重選別によりこれらを選別することで、外観、整粒割合向上とともにDON濃度が低減できる。
  3. 歩留を向上させ、製品に基準値を超えた被害粒混入を防ぐには比重選製品口割合が同程度のロットを形成する必要がある。比重選製品口割合が同程度のロットを形成するには整粒割合により仕分けすることが効果的である(図1)。なお、ロット形成は施設の調整タンクや乾燥機の数に応じて対応する。
  4. 以上のことから小麦共同乾燥調製施設における流れを図2に示す。
[成果の活用面・留意点]
  1. 麦類共同乾燥調製施設で活用できる。
  2. DON濃度4.23ppm、赤かび粒率1.87%以上の小麦については検討していない。また、赤かび粒の混入割合が大きいと調製歩留が低下するため、防除対策の徹底を原則とする。
  3. 赤かび粒、整粒割合等の基準値がクリアされていても光沢不足、退色粒等の外観不良で格下げになる場合があることに留意する。
[具体的データ]

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 調製技術と簡易分析法によるマイコトキシン汚染低減技術の確立
予算区分 受託
研究期間 2004〜2006年度
研究担当者 原 圭祐、角野晶大
発表論文等