有機質資材を用いたハウス夏秋どりトマトの無化学肥料栽培指針

[要約]

ハウス夏秋どりトマトの本圃において、収量や品質を低下させない無化学肥料栽培を実現するため、使用する有機質資材の種類、施用量および施用時期に関する栽培指針を策定した。また、本技術は土壌肥沃度に対応した現行の施肥対応技術も適応可能である。

[キーワード]

トマト、ハウス夏秋どり、無化学肥料栽培、たい肥、有機質肥料、施肥対応

[担当] 道南農試・研究部・栽培環境科
[連絡先] 電話 0138-77-8116,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・生産環境
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
トマトの有機栽培においては基肥と複数回に及ぶ追肥のすべてを有機質資材で施用する必要がある。そこで、有機トマト栽培を実践する生産者の実態調査を行い、肥培管理についての問題点を抽出するとともに、基肥と追肥の全量有機物施用によるハウス夏秋どりトマトの無化学肥料栽培技術を確立する。
[成果の内容・特徴]
  1. 有機栽培を行う各生産者の基肥および追肥方法は生産者間で大きく異なり、生産性は不安定である。また、生産者圃場の土壌養分状態をみると、窒素・リン酸の肥沃度が高い傾向にあり土壌肥沃度に対応した適切な肥培管理を行う必要があると考えられる(表1)。
  2. 全量有機区は化成標準区と比較して窒素吸収量がやや低いものの初期生育は同等であり、化成標準区に近い全収量および良果収量を得ている。さらに、果実の糖度・酸度についても全量有機区は化成標準区と同等である(表2)。
  3. 「北海道施肥ガイド」などに基づき土壌肥沃度水準ごとに施肥対応した場合も、有機肥料区は化学肥料区と同等に近い初期生育および良果収量を得ている。窒素吸収量については水準ごとに傾向が異なるが、収量に及ぼす程度は小さいと考えられる。また、果実の糖度および酸度も同等である(表3)。
  4. 以上の結果から、ハウス夏秋どりトマトの本圃における栽培では、全量有機質資材を用いた無化学肥料栽培が可能であり、土壌肥沃度に対応した現行の施肥対応も適応可能である。たい肥と有機質肥料を用いたハウス夏秋どりトマトの本圃における無化学肥料栽培の施肥指針を策定した(表4)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本成績は、通常防除を行った全量有機物施用試験の成果である。
  2. 全量有機物施用栽培においても土壌診断に基づき施肥対応を行い、土壌養分を適切に維持する。
  3. たい肥連用に伴う窒素、リン酸、カリの減肥量は、「施設栽培におけるたい肥連用効果と窒素・リン酸減肥基準」(平成14年度研究成果情報)を参照とする。
[具体的データ]

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 施設野菜の有機栽培における有機物施肥技術の開発
予算区分 農政部事業
研究期間 2004〜2006年度
研究担当者 八木哲生、坂口雅己、日笠裕治、中住晴彦
発表論文等