有機物等の窒素評価に基づくテンサイの窒素施肥対応

[要約]

有機物等の施用履歴をNスコアとして評点化することにより、テンサイの窒素吸収量を推定でき、それにより最適窒素施肥量を算定できる。有機物等の施用履歴が不明な場合は、硝酸態窒素量の測定で対応する。

[キーワード]

テンサイ、有機物、窒素評価、Nスコア、硝酸態窒素量、窒素施肥対応

[担当] 十勝農試・生産研究部・栽培環境科
[連絡先] 電話 0155-62-9837,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・生産環境
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
近年、家畜糞尿等の有機物や窒素施肥の過剰施用により、テンサイの糖分低下や地下水の硝酸汚染が懸念されている。そこで、テンサイの窒素施肥量を適正化するため、有機物等の窒素評価に基づいた新たな窒素施肥対応を組み立てる。
[成果の内容・特徴]
  1. 北海道施肥ガイドを基に、有機物施用等を窒素施肥量として変換・評価するNスコアを設定する(表1)。
  2. 既往の研究と本研究結果から、テンサイの最大糖量と地下水中硝酸性窒素濃度10mg/L以下の両立は、最適窒素吸収量を23〜25kg/10aで得られる。
  3. 窒素供給量(春季の0-60cm硝酸態窒素量と施肥窒素量の合計)はテンサイの窒素吸収量を有意に説明できるが、その関係は有機物施用状況に影響される(図1)。
  4. 春季における畑土壌の無機態窒素量(0〜100cm)は0〜75kg/10aと変異が大きく、平均値は12.9 kg/10aであり、堆肥や家畜糞尿、緑肥作付け時の窒素多肥は春季の無機態窒素量に大きく影響を及ぼす。
  5. 春季の0-100cm無機態窒素量(y1,kg/10a)は、春季の0-60cm硝酸態窒素量(x1,kg/10a) によって推定可能である(回帰式@y1=1.1x1+3.8 ,r=0.95**)。
  6. 窒素施肥量と春以降のNスコアと春季の0-100cm無機態窒素量の合計(x2,kg/10a)はテンサイの窒素吸収量(y2,kg/10a)と密接な正の相関関係(r=0.67**)があり、回帰式Ay2=0.75x2+5.0によってテンサイの窒素吸収量(y2)を推定できる(図2左)。
  7. 窒素施肥量と前作(主に小麦)収穫後から施肥前までのNスコアの合計(x3,kg/10a)はテンサイの窒素吸収量(y3,kg/10a)と極めて密接な正の相関関係(r=0.75**)があり、回帰式By3=0.89x3+4.9によってテンサイの窒素吸収量(y3)を推定できる(図2右)。
  8. 回帰式Aのy2に最適窒素吸収量23-25kg/10aを代入し、さらに回帰式@を用いてx2を{窒素施肥量+春以降のNスコア+1.1×(0-60cm硝酸態窒素量)+3.8}として回帰式Aを解くと、
     窒素施肥量(kg/10a)=20〜22−{春以降のNスコア+1.1×(0-60cm硝酸態窒素量)} (式C)
    が得られる。式Cに基づくと、有機物施用等の履歴が分からない場合の窒素施肥対応が可能である(図3)。同様に回帰式Bのy3に最適窒素吸収量23-25kg/10aを代入して解くと、
     窒素施肥量(kg/10a)=20〜22−(前作収穫後から施肥前までのNスコア) (式D)
    が得られる。式Dに基づくと、有機物施用等の履歴が分かる場合の窒素施肥対応が可能である(図3)。
     
[成果の活用面・留意点]
  1. 本技術は有機物等の投入を量的に評価するものであり、窒素施肥量の適正化に有効である。
[具体的データ]

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 有機物等の窒素評価に基づくテンサイの窒素施肥対応
予算区分 受託
研究期間 2004〜2006年度(平成16〜18年度)
研究担当者 笛木伸彦、竹内晴信、中津智史
発表論文等