泥炭土農耕地における土地利用形態と温室効果ガス |
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[要約] |
連作田のメタン発生量は大きいが、復元1年目の水田(復元田)ではメタンの発生量が顕著に減少し、温室効果ガス総発生量は小さくなる。転換畑は、温室効果ガス総発生量に対し、二酸化炭素と亜酸化窒素の寄与が大きい土地利用形態である。 |
[キーワード] |
温室効果ガス、復元田、連作田、転換畑、泥炭土、地球温暖化指数 |
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[背景・ねらい] |
農耕地から発生する温室効果ガスの定量的評価とコントロールの重要性が世界各国で認識され研究が取り組まれている。ここでは、泥炭土農耕地における連作田(水田2年以上)、復元田(復元1年目)、転換畑から発生する二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素を測定し、土地利用形態と地球温暖化へ及ぼす影響との関係を明らかにする。 |
[成果の内容・特徴] |
- 年間の二酸化炭素フラックス(NEE、g C m-2
y-1)は、連作田、復元田の-141〜78に比べ転換畑は92〜337で顕著に大きい(表1)。転換畑における有機物分解にともなう二酸化炭素フラックス(微生物呼吸量)は低地土転換畑(北海道三笠市)で得られた文献値に比べて有意に高い値であった。
- 年間のメタンフラックス(g C m-2
y-1)は、連作田が33〜108と他の土地利用に比べ顕著に高いのに対し、復元田では連作田の20%と激減する。転換畑のフラックスはほぼ0である(表1)。
- 年間の亜酸化窒素フラックス(g N m-2
y-1)は、転換畑で高く、連作田では転換畑の1/10以下、復元田ではほぼ0に等しい(表1)。転換畑の亜酸化窒素フラックスは、低地土転換畑(北海道三笠市)や火山灰土の畑地(北海道芽室町)で得られた文献値に比べて有意にかつ顕著に高かった。
- 温室効果ガスは同一重量でも地球温暖化へおよぼす程度が異なる。メタン、亜酸化窒素の重量を、地球温暖化指数を用い、同じ影響を持つ二酸化炭素の重量に換算(g
CO2 m-2
y-1)すると、温室効果ガス総発生量は、連作田では1039〜4868でメタン発生の寄与が非常に大きいが、復元田ではメタン由来の寄与が429で連作田の20%以下である(図1)。
- 転換畑では、温室効果ガス総発生量が連作田より半減するが、二酸化炭素、亜酸化窒素の寄与が温室効果ガスの総発生量に大きく寄与する土地利用形態である。(図1)。
- 三種のガスを込みにしてみても、温室効果ガス総発生量は、連作田が最大であるが、復元田では約5分の1で、対象とした土地利用で最も小さい値となる。これは、メタン発生量が大幅に削減されることによる(図2)。
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[成果の活用面・留意点] |
- 本研究で得られたデータは、泥炭土農耕地のオリジナルデータとして温室効果ガス研究に活用出来る。
- 農業機械の燃料消費や排水経由等、温室効果ガスの間接的な放出は考慮していない。
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[具体的データ] |


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[その他] |
研究課題名 |
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寒地における気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発 |
課題ID |
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215-a.1 |
予算区分 |
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基盤 |
研究期間 |
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2002〜2006年度 |
研究担当者 |
: |
永田 修・鮫島良次 |
発表論文等 |
: |
Naser et al.(2005), Phyton, 45(4),
285-293 | |