修学旅行生を対象とした農家民宿の受入効果と組織化方策 |
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[要約] |
農業体験民宿による修学旅行生受入は、自治体が活動を支援することで可能となる。効果は農家意識面に現れたが、都市農村交流活動の有無により目的や評価に違いがある。そのため、参加目的の違いを前提に組織化を図るとともに、目的意識の共有化を図る必要がある。 |
[キーワード] |
修学旅行、農家民宿、農業体験 |
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[背景・ねらい] |
北海道への修学旅行では、少人数で農業体験ができる農家民宿へのニーズが高まっている。しかし、受入組織は形成されつつある段階にあり、定着や受け入れの拡大には、受け入れの効果や課題を明らかにする必要がある。そこで組織的受入を行うN町を事例に農家民宿による修学旅行生受入の効果、会員農家の特徴から見た組織化の方策を明らかにする。 |
[成果の内容・特徴] |
- 修学旅行生受入は、N町が確固たる方針を打ち出し、受入のための運営協議会を設立するとともに、農林漁業体験民宿登録や農家民宿の規制緩和対策や支援措置を図ることで104戸(18年)を確保した。この活動は、@所得効果は小さいが(表1)、A地域の延べ宿泊者数が10%以上増加する貢献が期待され、B家族内や地域の活性化、農業への自信、都市交流の重要性認識に繋がるといえた。さらに、C非会員農家にも農業への自信を再認識させる効果がある。D農家手取金額の37%が地域で間接消費され、受入拡大は地域貢献にも繋がる。
- 都市農村交流活動に対して運営協議会の会員農家は非会員農家に比べて、多様な効果を持つと期待するが(表2)、A群はB群に比べて消費者への効果を期待し、B群は農業経営に対する効果を期待しており、これまでの都市交流経験の有無により、やや期待が異なる。
- 会員農家の運営協議会への参加目的は、農業農村理解、知名度向上にあるが、A群はB群に比べて低く、所得や販売面への効果は期待していない(図1)。非会員農家もB群と同様の傾向にあるため、都市農村交流経験のない農家は、新たな取り組みに対する期待が高い。
- 農家民宿活動への現状評価は低く、A群は低い(図2)。A群の都市農村交流活動は農家民宿のみではないことが、農家民宿に過度な期待を持たず、評価も厳しいといえる。B群は初めての取り組みへの期待感が高く、実践できた満足感が評価に繋がったといえる。このように、農家の経験により農家民宿に取り組む目的と現状評価に違いが生じる。
- 今後の組織拡大は、C群(非会員農家)への勧誘が必要になるが、C群でも都市農村交流活動を行う農家は農家民宿に関心を持つ農家が多く、これら農家への勧誘が効果的である(図3)。しかし、N町は全町的な取り組みを目指し、都市農村交流経験の有無によらず農家勧誘しているため、組織運営では、多様な目的に配慮できる活動や共通目標の設定が必要である。
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[成果の活用面・留意点] |
- 道外からの修学旅行生を役場や農協などが組織的に受け入れをする際の参考となる。
- 設立初期の組織を対象とした評価であることに留意が必要である。
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[具体的データ] |




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[その他] |
研究課題名 |
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農業・農村体験によって発現する教育的機能の解明 |
予算区分 |
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交付金(農工研) |
研究期間 |
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2004〜2006年度 |
研究担当者 |
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金子 剛 |
発表論文等 |
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