水稲の有機栽培における生産安定化技術 |
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[要約] |
有機栽培の育苗では、pH上昇を無機硫黄剤の床土施用によって矯正し、有機質肥料の適正施用により、慣行並みの苗形質を確保する。除草機の作用深度を4cmとして3回除草を行い、雑草の乾物量を7g/u以下とし、減収率を5%以下にする。また、ドロオイムシ機械防除は効果が高い。 |
[キーワード] |
イネ、有機栽培、有機質肥料、機械除草、イネドロオイムシ、防除 |
[担当] |
上川農試・研究部・栽培環境科、中央農試・生産研究部・機械科、水田・転作科、環境保全部・クリーン農業科 |
[連絡先] |
電話 0166-85-2200,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp |
[区分] |
北海道農業・水田・園芸作 |
[分類] |
技術・普及 | |
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[背景・ねらい] |
有機農産物に対する消費者の関心が高まっており、水稲でも有機栽培の安定化技術が期待されている。そこで、北海道の水稲有機栽培における特徴や問題点を明らかにするとともに、問題解決へ向けた水稲の有機栽培安定化技術について検討する。 |
[成果の内容・特徴] |
- 水稲の有機栽培実践生産者を対照とした実態調査において、品種は「ゆきひかり」「きらら397」の事例が多く、pHが高い事例や、育苗および本田の窒素施肥量が過不足と考えられる事例があった。
- 有機栽培現地の収量は376〜653kg/10aで、420kg/10aを下回る事例が約3割に上っていた。また、冷涼年の苗乾物重の不足、さらに本田での初期生育の不足や雑草の多発などの問題も見られた。
- 有機栽培の育苗においては有機質肥料の施用により土壌pHが上昇するため、無機硫黄剤を施用してpHを低下させ、ムレ苗発生のリスク低減と苗形質向上を図る(図1)。
- 成苗の培土は無施肥、置床は窒素無機化の速い有機質肥料の25gN/m2の施肥量で慣行栽培並みの苗形質が得られる。中苗は培土に窒素無機化の速い有機質肥料で1.0gN/箱を施肥し、市販有機質ペースト肥料を2.0gN/箱追肥することで、ほぼ慣行並みの苗形質が得られる。
- 収量420kg/10a以上を得るためには、7月上旬の窒素吸収量が1.8kgN/10a以上必要であり、慣行栽培の施肥標準に準じた窒素施肥が必要である(図2)。
- 強制駆動式揺動タイン型除草機による除草は、タイン作用深度が4cm程度の時、除草効果が最も高く、いずれの草種に対しても除草効果がある(図3)。
- 減収率が5%に達する雑草合計乾物量は7月上、中旬で7g/m2であり、これ以下に抑制するには、移植後10〜15日目から10日間隔で、機械除草を3回行う必要があり、2回代掻きを行った場合には少なくとも1回、機械除草が必要である(図4)。
- イネドオロイムシ幼虫に対する機械防除により、処理前に比べ幼虫密度が42%に減少し、防除効果が認められる(図5)。
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[成果の活用面・留意点] |
- 本成果は上川・空知地方で得られた現地調査と試験データに基づく。
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[具体的データ] |




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[その他] |
研究課題名 |
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水稲の有機栽培における生産安定化技術 |
予算区分 |
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北海道予算 |
研究期間 |
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2004〜2006年度 |
研究担当者 |
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丹野久、木村義彰、橋本庸三、中辻敏郎、石井耕太、佐々木亮 |
発表論文等 |
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