耐冷性が強く、玄米白度が高い良食味水稲新品種候補系統「上育糯450号」
[要約]
「上育糯450号」は穂ばらみ期耐冷性は“極強”で強い。また、「はくちょうもち」より多収で玄米白度が高く、おこわ等の食味が「はくちょうもち」にやや優る。
[キーワード]
[担当]道立上川農試・研究部・水稲科
[代表連絡先]電話0166-85-4115
[区分]北海道農業・水田・園芸作
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
北海道産もち米の特徴は、硬化性(炊飯したり、もちにしてからの硬くなりやすさ)が低く、加工直後の柔らかさ・粘りが長時間維持されることであり、赤飯・おこわ等に最適である。主要もち米品種「はくちょうもち」の耐冷性は“強”であるが、気象条件の変動による生産と供給の不安定化が指摘されている。また、品質面では、北海道産もち米は府県産もち米と比較して白度が低いことが指摘されており、この改善が望まれている。そこで北海道産もち米の安定生産のためには、耐冷性が強く収量性が高く玄米、白米白度が高い早生品種が必要である。
[成果の内容・特徴]
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「上育糯450号」は、平成10年に北海道立上川農業試験場において、良質耐冷性糯品種の育成を目標に、「北海糯286号」(良質良食味)と「上育糯425号」(多収、耐冷性)のF1を母、中生良質の「風の子もち」を父として人工交配を行った雑種後代から育成された。
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出穂期は「はくちょうもち」よりやや早く「風の子もち」より早い“早生の晩”である。成熟期は「はくちょうもち」並で、「風の子もち」より早い(表1)。
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穂ばらみ期の耐冷性は「はくちょうもち」「風の子もち」より強い“極強”であり、 開花期耐冷性は“中〜やや強”である(図1)。
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玄米白度は「はくちょうもち」「風の子もち」より高く、白米白度は「はくちょうも ち」よりやや高く、「風の子もち」並からやや高い(表1)。
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玄米収量は「はくちょうもち」より多収で「風の子もち」よりやや少ない(表1)。
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おこわの食味は「はくちょうもち」「風の子もち」にやや優る(図2)。
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いもち 病真性抵抗性遺伝子型は“Pia”と推定され、圃場抵抗性は「はくちょうも ち」「風の子もち」より劣り、葉いもちおよび穂いもち抵抗性は“やや弱”である(表1)。
- 玄米品質は、「はくちょうもち」「風の子もち」並で、検査等級は「はくちょうもち」「風の子もち」にやや優る。
[成果の活用面・留意点]
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「上育糯450号」を「はくちょうもち」の一部と「風の子もち」に置き換えて作付け することにより、北海道産もち米の食味水準を引き上げるとともにその生産の安定化を 図る。普及予定面積は3,000haである。
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いもち病抵抗性が不十分であるため、発生予察に留意し、適切な防除に努める。
平成20年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「水稲新品種候補「上育糯450号」」 (普及奨励)[具体的データ]
[その他]
研究課題名:寒地中北部向け早生、高度耐冷性、良食味品種及び直播栽培適性の水稲品種 の育成、良品質もち米の開発促進
予算区分:指定試験、受託試験
研究期間:1998〜2008年度
研究担当者:佐藤 毅、沼尾吉則、木下雅文、吉村 徹、粕谷雅志、品田博史、尾崎洋人、 佐々木忠雄、木内 均、前川利彦、相川宗嚴、平山裕治、菊地治己、田中一生、丹野久.
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