いちごのウイルスフリー苗生産のためのウイルス検査法
[要約]
作製したイチゴマイルドイエローエッジウイルス(SMYEV)抗体によりSMYEVを検出できる。また、作製したLAMPプライマーを用いてSMYEV、イチゴモットルウイルス(SMoV)、イチゴベインバンディングウイルス(SVBV)を検出できる。
[キーワード]
[担当]道立中央農試・基盤研究部・遺伝子工学科、北海三共株式会社
[代表連絡先]電話0123-89-2001
[区分]北海道農業・生物工学
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
栄養繁殖性であるいちごは、ウイルスに感染すると、生産性と品質が著しく低下するためウイルスフリー苗による栽培が不可欠であるが、その検査は経費、作業時間、検査者の技術といった多くの問題を抱えている。本試験では、現地で多く発生しているイチゴマイルドイエローエッジウイルス(SMYEV)のELISA法(酵素結合抗体法)と母株のウイルス高感度検査法として主要なウイルスであるSMYEV、イチゴモットルウイルス(SMoV)、イチゴベインバンディングウイルス(SVBV)のRT-LAMP法(遺伝子診断法)を確立し、いちごのウイルスフリー苗の安定生産に寄与する。
[成果の内容・特徴]
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いちごの現地サンプルから高い頻度で検出されているSMYEVについて大腸菌発現系 でSMYEV-外被タンパク質遺伝子を発現させ、ウサギに免疫して特異的なSMYEVポリクローナル抗体を作製できる
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作製したSMYEV抗体は、DAS-ELISA法により罹病葉の生体重の100 〜1000倍希釈までSMYEVを検出が可能である(表1)。
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病害虫診断試験で持ち込まれたサンプルについてELISA法によりSMYEV検出が可能である(表2)。
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いちごの主要なウイルスであるSMoV、SMYEV、SVBVの北海道分離株について遺伝子配列を明らかにしてプライマーを設計・選抜した特異性の高いプライマー(表3)を用いて、いちご罹病葉の粗抽出液からLAMP法によりSMYEVは罹病葉から高感度に検出することができる(表4)。
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SMYEVのELISA法は多検体検定が可能で高価な機器を必要としないため、苗の検査や病害虫診断、生産現場での検査に利用が可能である。またSMYEV、SMoV、SVBVのLAMP法は、ウイルス遺伝子の抽出作業が煩雑で労力とコストがかかるPCR法に代わりウイルスフリー苗の母株のウイルスフリー検査に利用が可能である。
[成果の活用面・留意点]
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SMYEV、SMoV、SVBVのLAMP法は母株のウイルスフリー検査に利用する。SMYEVのELISA法はランナー苗のウイルスフリー検査や、現地圃場のウイルス検査および病害虫診断に利用する。
平成20年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「いちごのウイルスフリー苗生産のためのウイルス検査法」(指導参考) [具体的データ]
[その他]
研究課題名:いちごのウイルスフリー苗生産のためのウイルス検査法の開発
予算区分:道費(重点領域)
研究期間:2005〜2007年度
研究担当者:佐々木純、古田和義(北海三共(株))、竹内徹
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