ユニバーサルプライマーによる球根花き病原ウイルスの診断
[要約]
植物ウイルスを検出するユニバーサルプライマーを利用し、球根花き6品目で延べ11ウイルスを遺伝子診断できる。このうち、フリージアのFreesia mosaic
virusおよびラナンキュラスのRanunculus mild mosac virusは本邦で初めて検出されたウイルスである。
[キーワード]
遺伝子診断、球根花き、植物ウイルス、ユニバーサルプライマー
[担当]道立中央農試・基盤研究部・遺伝子工学科
[代表連絡先]電話0123-89-2001
[区分]北海道農業・生物工学
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
球根花きに発生するウイルスは北海道で今までに取り組んだ事例が少なく、未解明のものが多い。これらウイルスを診断・同定するため、科あるいは属内のウイルスを広く検出できるプライマー(ユニバーサルプライマー)を利用して病原ウイルスの診断を目指したものである。球根花きの品目ごとに発生する病原ウイルスをリストアップし、その病徴等の情報を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
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ユニバーサルプライマー(表1)を用いて、植物ウイルスとして重要な1科6属の病原ウイルスを検出できる。
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カルラウイルス属の病原ウイルスは外被タンパク質を含む領域を増幅できるよう新たに設計したユニバーサルプライマーで検出できる(表1)。
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ポティウイルス科とカルラウイルス属、ククモウイルス属とポテックスウイルス属のユニバーサルプライマーは同一条件でPCR反応を実施できる(表2)。
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検出されたPCRの増幅断片の塩基配列情報から該当ウイルスを特定できる。
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球根花き6品目で延べ11ウイルスを遺伝子診断できる(表3)。いずれも北海道の球根花きで初めて確認されたウイルスである。
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フリージアの退緑斑紋症状はFreesia mosaic virus(FreMV)によるもので、ラナンキュラスのモザイク症状はRanunculus mild
mosac virus(RMMV)によるものである。いずれも本邦で初めて検出されたウイルスである。
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カラーでは未確認だったコンニャクモザイクウイルスおよびトマト黄化えそウイルスを検出できる。
- 北海道で新発生のキュウリモザイクウイルスによるサンダーソニア条斑モザイク病を遺伝子診断できる。
[成果の活用面・留意点]
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検出されたウイルスの情報は球根花きウイルス症状の診断に活用する。
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ユニバーサルプライマーを用いた検出法は球根花き以外の作物でも応用可能である。
平成20年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「遺伝子解析による球根花きの病原ウイルスの診断」(指導参考) [具体的データ]
[その他]
研究課題名:@「球根花きに発生する未知ウイルスに対応した高精度遺伝子診断技術の開発」
:A「球根花きに発生する病原ウイルスの診断技術開発」
予算区分:@JST、A道費
研究期間:@2006、A2007〜2008年度
研究担当者:堀田治邦、佐々木純、竹内徹
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