高品質酒造好適米生産に向けた酒米団地の改善方策
[要約]
酒造好適米を安定して生産する団地を形成するには、酒造業者からの産地指定が必
須である。産地指定(率)を向上させるには、戦略を明確にして生産条件の整備や生産管理指導による品質改善を進める一方、酒造業者との情報交換・ニーズの取込みが必要である。
[キーワード]
[担当]道立中央農試・生産研究部・経営科
[代表連絡先]電話0123-89-2286
[区分]北海道農業・水田・園芸作
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
北海道産の酒造好適米(以下、酒米)の生産拡大が期待されているが、酒米品質は年次・団地間格差があり、酒米需要喚起に向けた生産上の課題になっている。そこで良品質な酒米を生産できる安定した酒米団地づくりの方策を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
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道内の酒造好適米の作付面積は拡大しH16年に266haになったが、需要減少によりH17年には酒米供給過剰解消を目的に各団地は減産を実施し、187haに縮小した。この減産率は各団地で異なる。道内の主要6団地でみると、産地指定率の高い団地で減産率が低い傾向にあり、酒米団地の安定化には産地指定率の向上が不可欠である(図1)。
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高い産地指定率を団地Aがどのように得ているか、指定率の低い団地Bとの比較でみた結果、団地形成時から品質を重視し、高品質な酒米を栽培できる地域と生産者に限定して生産。また、関係機関と協力して技術指導の徹底や情報の共有化をはかったことがあげられる(表1)。他方、団地Bは土地条件によらず地域一円で生産し、生産者も特定の者を選ぶことはしない。さらに、酒米生産に対する生産者の視点に統一性がないとともに、不十分な技術指導から高品質な酒米生産には適当でない圃場選択や肥料多投がおこなわれ、酒米品質をあらわすタンパク質含有率は高い。
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酒造業者に対する酒米団地の取り組みとして、団地Aは産地指定する特定の酒造業者への視察・業者受入れ回数を多く持ち、業者の産地評価向上を図るとともに、新たなニーズ、アドバイスを把握して団地内の技術講習会で周知し、関係機関とともに対応策に結びつけている(表2)。他方、団地Bは視察回数が少なく、かつ視察先も指定業者に集中していない。そのため、研修で得た情報を品質改善に利用できず、酒造業者との関係も部分的な委託醸造の範囲を脱しきれないでいる。
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以上から、酒米団地が産地指定を獲得し生産拡大をはかるには、@ターゲットとする酒造業者のニーズを把握して産地戦略を再構築する、A生産地域・生産者の選定および生産条件の整備をおこなう、B明確にした品質目標に向け生産管理技術の指導を進め、品質改善を実現する、C生産者の意識啓発ならびに酒造業者との関係強化に向け、酒造業者との情報交換、共有化とニーズの取り込みを進める(図2)。
[成果の活用面・留意点]
- 酒米団地の再編や組織拡大時において参考とする。る。
平成20年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「高品質酒造好適米生産に向けた酒米団地の改善方策」(指導参考)[具体的データ]

表
2 「大地の星」のコスト低減対策のまとめ

図2 酒米団地の改善方策
[その他]
研究課題名:多様な米ニーズに対応する品種改良並びに栽培技術の早期確立
1-7)米の多様化に伴う産地・流通体制の検討
予算区分:受託(民間)
研究期間:2004〜2008年度
研究担当者:金子 剛、三宅俊輔
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