雪中貯蔵キャベツの結球内部黒変症状対策と雪中貯蔵による品質保持
[要約]
黒変症状発生履歴がある圃場での「冬駒」栽培では土壌pH矯正と硫酸カルシウム施肥が、著しい発生履歴がある圃場では「大学寒玉」の導入が有効である。雪中貯蔵により、収穫時の外観・内部品質ともに長期間維持される。
[キーワード]
キャベツ、雪中貯蔵、内部黒変、カルシウム、品種、内部品質
[担当]道立上川農試・研究部・畑作園芸科、栽培環境科、道立花野技セ・研究部・栽培環境科
[代表連絡先]電話0166-85-2200
[区分]北海道農業・水田・園芸作
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
キャベツを雪中貯蔵した時に発生する結球内部黒変症状の発生軽減対策を確立する。また、雪中貯蔵中の内部成分の推移を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
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主要栽培品種「冬駒」について結球CaO含有率(%)と結球内部黒変症状発生程度を個体毎に調査した結果、結球CaO(%)平均は11月収穫期0.63%、翌2月掘出期0.56%で、いずれの時期も結球CaO(%)が0.60%以上で黒変程度2以上(出荷不可)球数割合が低い。
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硫酸カルシウム施用区は結球CaO(%)が高く黒変程度が低い傾向である。「適pH×硫カル」区では、土壌pH上昇、CaO飽和度上昇、交換性および水溶性CaO量増加、結球および結球葉葉縁CaO(%)増加が認められ、黒変程度2以上球数割合が低い(表1)。
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品種比較試験の結果、露地、養液栽培両試験で黒変症状が発生せず(図1)、かつ長期貯蔵が可能であったのは「大学寒玉」である。
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「大学寒玉」は「冬駒」対比で、雪中貯蔵後の規格内一球重が大きく、収量が同等〜多い。また、球形がやや扁平で、外観色がやや淡い。食味官能調査では、「冬駒」に比べて甘みがやや少なく、ややみずみずしいという評価である(表2)。
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「冬駒」を栽培する際は結球CaO(%)富化を目的として、炭酸カルシウムによる土壌pH
6.0〜6.5矯正を遵守した栽培管理を行う。さらに過去に軽微(黒変程度1)な症状の発生が認められた圃場では、基肥施用時の硫酸カルシウム100〜200kg/10a施用が有効である。また、「冬駒」で黒変程度2以上球が発生したことがある圃場では、品種特性にも考慮が必要であるが「大学寒玉」の導入により被害を回避できる。
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雪中貯蔵を冷蔵庫貯蔵と比較すると、内部成分は大差なく、外葉の腐敗・黄化がごく少なく、貯蔵後の調整歩留まりが高い。また、雪中貯蔵前後では、遊離アミノ酸含量には一定の傾向は認められないが、BrixおよびビタミンCはほぼ同等に維持される(表3)。雪中貯蔵は、地域の自然冷熱を利用して収穫時の外部・内部品質を長期にわたり維持できる優れた低コスト貯蔵法である。
[成果の活用面・留意点]
- 本成果は、雪中貯蔵キャベツ産地における結球内部黒変症状の軽減・回避対策として活用する。
- 雪中貯蔵
キャベツを栽培する際は結球CaO(%)富化を目的として、北海道施肥ガイド野菜畑土壌診断基準値(土壌pH6.0〜6.5)を遵守した栽培管理を行う。
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「大学寒玉」を栽培する際は生育過剰による裂球を避けるため、定植時期(7月中旬)および適正施肥量(施肥標準:窒素22kg/10a)を遵守する。
平成20年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「雪中貯蔵キャベツの結球内部黒変症状対策と雪中貯蔵中の品質変化」(指導参考)[具体的データ]
[その他]
研究課題名:アミノ酸から見た道産野菜機能性解明調査
予算区分:道費(農政部事業・力強い野菜産地づくり推進事業)
研究期間:2005〜2007年度
研究担当者:木村文彦、植野玲一郎、野田智昭、平井剛
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