大豆における開花期以降の耐湿性圃場検定法
[要約]
灌漑排水設備を有する転換畑に検定圃を設け、試験区周囲に額縁明渠を設置し、湛水処理を7月中下旬から8月上旬まで行い、還元状態とした土壌での萎凋程度を調査することにより、大豆の開花期以降の耐湿性を検定できる。
[キーワード]
[担当]道立中央農試・作物研究部・畑作科
[代表連絡先]電話0123-89-2284
[区分]北海道農業・畑作
[分類]研究・普及
[背景・ねらい]
大豆の耐湿性は、転換畑向け大豆品種育成において重要な評価項目であり、茎疫病等の土壌病害による湿害と分けて評価する必要がある。そこで、北海道で問題になる開花期以降の湿害に関し、耐湿性を評価する圃場検定法を確立し、品種間差異を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
-
検定圃場はかんがい排水設備を有する転換畑に設け、試験区の周囲に額縁明渠を設置して用水を通すことにより、大豆の株元が浸水する程度の湛水処理を行う。処理は早生〜中生品種の開花期頃(7月中下旬)に開始し、弱品種の萎凋が進み障害の品種間差が明瞭になった時点(8月上旬)で終了する。その間、検定圃場は酸化還元電位(Eh)0〜−200mVと還元状態となる(図1)。
-
湛水処理による生理障害(萎凋程度)の調査は年次間で程度の序列が安定している湛水処理終了直前〜直後に、達観により0〜4の5段階で評価を行う(表2)。
-
萎凋程度には明らかな品種間差が認められ(表1)、地上部乾物重対照区(湛水なし)比と相関がある(図2)。また、萎凋症状が観察された時点での茎疫病診断では病斑や組織内の卵胞子は観察されないことから、茎疫病が萎れの主要因ではなく、萎凋程度は耐湿性の強弱を反映していると考えられる。
-
萎凋程度の大小により、耐湿性検定の基準品種として、「植系32号」を“強”、「ツルムスメ」「トヨムスメ」「ユキホマレ」を“中”、「トヨハルカ」を“弱”とする(表1)。
[成果の活用面・留意点]
-
湛水により還元土壌となる中央農試岩見沢試験地において実施したものである。
-
耐湿性が強と評価した供試材料は、耐湿性母本として育種に利用できる。
平成20年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「大豆における開花期以降の耐湿性圃場検定法(研究参考)」[具体的データ]
[その他]
研究課題名:転換畑向け大豆耐湿性品種の育成試験
予算区分:指定試験
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:鴻坂扶美子、田中義則、藤田正平
目次へ戻る