極小粒子馬鈴薯澱粉を利用したリン酸化オリゴ糖を含有する発泡酒
[要約]
風力分級機を用いて得られた極小粒子(メジアン径15μm以下)の馬鈴薯澱粉は、発泡酒の副原料として適している。これを利用した馬鈴薯澱粉の発泡酒には、他の澱粉の発泡酒と比較して、機能性成分であるリン酸化オリゴ糖が多く含まれる。
[キーワード]
[担当]北海道農研・機能性利用研究北海道サブチーム、寒地バイオマス研究チーム、帯広畜産大学、東京農業大学、十勝ビール(株)
[代表連絡先]電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
[区分]北海道農業・畑作、食品
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
馬鈴薯澱粉の中でも、特に風力分級機を用いて得られた極小粒子澱粉は、需要が少なく、販路の開拓が大きく求められている。リン酸基を多く有する高リン澱粉(リン含量760
ppm以上を目安とする)
を発泡酒醸造の副原料として用いれば、高リン澱粉は麦芽中のアミラーゼによっても完全に切断されずにリン酸オリゴ糖となるが、これはビール酵母によっても資化されないため、発泡酒内に残り、機能性成分に富む製品ができる可能性がある(図)。馬鈴薯澱粉を副原料とした新規の発泡酒を製造するために、種々の馬鈴薯澱粉の中から発泡酒醸造適性の有するものを選定し、その発泡酒の機能性成分を評価するとともに、官能評価試験も実施する。
[成果の内容・特徴]
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風力分級機を用いて分級前の馬鈴薯澱粉から約6%の収率で得られる極小粒子の馬鈴薯澱粉(メジアン経13.6um)は、高リン型であるが、これまでに知られてきた「エニワ」や「ホッカイコガネ」といった高リン・高粘度タイプのものとは異なり、低粘度である(表1)。そんため、極小粒子澱粉を発泡酒の副原料として用いたとき、澱粉糖化の際におかえる粘土による付加がかからない。
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リン酸化オリゴ糖含量は、馬鈴薯澱粉で醸造した発泡酒では600 ppmと明らかに高く、一方、リン含量が明らかに低いコーンスターチおよびサツマイモ澱粉で醸造した発泡酒では、リン酸化オリゴ糖はほとんど認められない(表2)。
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ビール・発泡酒単体についての絶対評価を行う記述式の官能評価試験において、馬鈴薯澱粉で醸造した発泡酒は、サツマイモ澱粉およびコーンスターチで醸造した発泡酒と比べてアロマにおいてやや劣るものの、ボディにおいて高いスコアが得られる(表3)。評価項目の合計値は、コーンスターチで醸造した発泡酒と同程度に高く、製品化の可能性が高いことが示唆される。
[成果の活用面・留意点]
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極小粒子の馬鈴薯澱粉にリンが多く含まれる理由については、今後の検討を要する。
平成20年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「極小粒子馬鈴薯澱粉を利用したリン酸化オリゴ糖を含有する発泡酒」(普及推進)[具体的データ]
[その他]
研究課題名:イモ類・雑穀類の機能性の解明と利用技術の開発
課題ID: 312-a
予算区分:異分野融合事業、基盤
研究期間:2003〜2008年度
研究担当者:野田高弘、橋本直人、齋藤勝一、福島道広(帯広畜産大学)、永島俊夫(東京農業大学)、塚本篤(十勝ビール(株))
発表論文等:永島ら(2007)「リン酸化オリゴ糖を含有する醸造酒」特開2007-135545
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