サイレージ用トウモロコシ一代雑種の新親品種「Ho90」
[要約]
サイレージ用トウモロコシ一代雑種の親品種である自殖系統「Ho90」(エイチオーキュウジュウ)は、早生のフリント種で、組合せ能力が高く、耐倒伏性およびすす紋病抵抗性に優れ、一代雑種品種の親系統として利用できる。
[キーワード]
トウモロコシ、自殖系統、早生、フリント、耐倒伏性、すす紋病、飼料作物育種
[担当]北海道農研・寒地飼料作物育種研究チーム、道立十勝農試
[代表連絡先]電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
[区分]北海道農業・畜産草地、畜産草地
[分類]研究・普及
[背景・ねらい]
わが国の栽培環境への適応性の高いトウモロコシの優良F1品種を育成するためには、その親品種となる優秀な自殖系統の育成が不可欠である。とくに、現場でのニーズが高まっている根釧および道北地域向きの早生品種の親として利用可能な、耐倒伏性やすす紋病抵抗性に優れ組合せ能力の高い系統が強く求められている。そこで、これらの要求に応えられるフリント種の早生自殖系統を育成する。
[成果の内容・特徴]
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フランスのパイオニア社育成の単交雑F1品種「ライサ」と北方型フリント種自殖系統「To38」との交配組合せを母材とし、病害抵抗性、耐倒伏性、雌穂特性などについての選抜と自殖により育成した自殖系統である。
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早晩性は“早生”に属する(表1)。
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初期生育は“中”、稈長および着雌穂高は低く、稈径はやや太い(表1)。葉角度が大きく(表1)、水平葉型に近い草姿で、雄穂長は短く、枝梗数は少ない(図1)。雌穂は粒列数が平均12.4列で(表1)、円筒型である。子実は、百粒重が20.6gとやや小粒で(表1)、やや褐色を帯びた橙黄色で丸形である。
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採種性は、放任受粉下での採種量が20.8
kg/aとやや低いが、花粉親としては実用的な水準にある。花粉飛散程度は“中”で比較系統に比べてやや劣るが(表1)、F1採種試験で花粉親としての利用に問題のないことを確認している。
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すす紋病抵抗性は“極強”、ごま葉枯病抵抗性は“やや強”、黒穂病抵抗性“強”である。耐倒伏性は“強〜極強”である(表2)。
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本系統とデント種自殖系統との交配による単交雑F1組合せの平均乾物収量は、同熟期の標準・比較品種とほぼ同等である(表3)。本系統を花粉親に用いて育成された単交雑F1系統「北交66号」は、標準品種「エマ」および比較品種「ぱぴりか」並の熟期で、それらと比較して乾雌穂重と乾雌穂重割合が高く、耐倒伏性とすす紋病抵抗性に優れている(表3)。
[成果の活用面・留意点]
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サイレージ用トウモロコシF1品種の親系統として利用できる。
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い採種性は高くないので、花粉親として利用する。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:大規模草地・飼料畑の活用のための高TDN飼料作物品種の育成
課題ID:212-c.2
予算区分:基盤、委託プロ(えさ)
研究期間:1994〜2007年
研究担当者:濃沼圭一、斎藤修平、佐藤尚、三木一嘉、榎宏征(北海道農研)、
千藤茂行、高宮泰宏、三好智明、鈴木和織(道立十勝農試)
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