草丈あるいは植物の反発力を利用した植物量の簡易推定法
[要約]
草丈あるいは植物の反発力を独立変数とする植物量の直線回帰式を求めておくことにより、簡易で非破壊的に短時間で植物量を推定できる。植物量のばらつきと回帰式の寄与率を統計学的に処理することにより簡易推定に必要な測定点数の目安を示す。
[キーワード]
定規、測定点数、直線回帰式、放牧地、植物量、ライジングプレート
[担当]北海道農研・集約放牧研究チーム
[代表連絡先]電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
[区分]北海道農業・畜産草地
、畜産草地
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
放牧草地に生育する植物量を迅速に把握できれば、放牧時期、放牧期間あるいは放牧面積を適切に決定する上で重要な情報となる。しかしながら、植物量推定法として一般的な刈取り法は労力を要し、放牧草地のような牧草の量的不均一性が顕著な草地では推定精度も悪化しがちである。そこで、草丈およびライジングプレート(RP、図1)による反発力を用い、現地において簡易で迅速に植物量を推定する際の回帰式およびそれらによる測定点数決定法を確立する。
[成果の内容・特徴]
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草丈あるいはRP(GALLAGHER社製を使用した。)による反発力を独立変数とする直線回帰式から植物量を簡易に推定できる。また、簡易推定のために必要な測定点数を統計学的に決定する(表1)。
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提示される直線回帰式と必要測定点数はメドウフェスク(MFと略記)、オーチャードグラス(OG)、ペレニアルライグラス(PRG)がそれぞれ優占する放牧草地における地上部および実際に放牧牛が摂食可能と考えられる地表から4cm以上の植物部分に関するものである(表2、表3)。
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得られた回帰式の寄与率は、草丈に関しては0.5–0.8、反発力に関しては0.6–0.8である(表2)。植物量のばらつきを考慮し適切な点数を測定することで、刈取り法と同程度の精度を短時間の測定で確保できる(表3)。
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地上部植物量の推定のために必要な測定点数は、相対許容誤差(平均値を中心とした許容誤差範囲)と危険率(推定を誤る確率)がともに0.05のレベルでは150を越える測定点数を必要とするが、相対許容誤差0.1で危険率0.05、あるいは相対許容誤差0.05で危険率0.3のレベルでは約50点ほどの測定点数で済み(表3)、十数分の時間内で測定を完了できる。
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地表4cm以上の植物量推定のために必要な測定点数は、地上部植物量の推定に必要な点数の2–5倍である。平均植物量に比してそのばらつきの大きなことが原因である(表3)。それでも、刈取り法に比べれば大幅な時間短縮を期待できる。
[成果の活用面・留意点]
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放牧草地の植物量推定に活用できる。特に、短草状態で利用されている放牧草地では植物量のばらつきが少ないと考えられるので、より高い精度の推定を期待できる。
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掲載されているデータを活用することも可能であるが、草丈や植物量のばらつきは同じ草地でも時期や家畜の採食程度により変動することから、測定点数は精度を保証するものではなく、目安である。測定地点毎に植物量を推定し、その牧区内でのばらつきから測定点数の妥当性を随時チェックするとよい。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:地域条件を活かした健全な家畜飼養のための放牧技術の開発
課題 ID:212-d.1
予算区分:基盤
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:坂上清一、渡邊也恭
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