堆肥中の揮発性脂肪酸の枯渇に伴い微生物群集構造が変化する


[要約]

[キーワード]

[担当]北海道農研・資源化システム研究北海道サブチーム、畜産草地研究所
[代表連絡先]電話011-857-9260、電子メール seika-narch@naro.affrc.go.jp
[区分]畜産草地、北海道農業・畜産草地
[分類]研究・普及


[背景・ねらい]

[成果の内容・特徴]

  1. 水分を約75%に調整した搾乳牛ふん尿堆肥混合堆積物約2.5t (Pile 1)と、アンモニア揮散低減の目的から完熟堆肥を被覆、混合した堆肥(Pile 2)について2週間程度に1度の切り返しを行った試験の結果である。
  2. 切返し後の均一なサンプルの分析によれば、Pile 1では堆肥化55日目に、Pile 2でも同様に堆肥化41日目でそれぞれVFAの枯渇および硝酸態窒素の蓄積開始が観察される(図1)。
  3. 穂ばらみ期の耐冷性は「はくちょうもち」「風の子もち」より強い“極強”であり、 開花期耐冷性は“中〜やや強”である(図1)。
  4. この時の堆肥中の微生物群集について、複合微生物系解析によく用いられる16S rRNA遺伝子を指標としたPCR-DGGE解析を時系列で行った結果(Pile 2)を図2に示す。それぞれのバンドは別々の微生物のDNA由来であることを示しているが、これらのバンドパターンについて主成分分析を行った結果(図3)から、VFAの枯渇と同期した微生物群集の安定化が明らかである。
  5. 群集を構成する微生物について見ると、堆肥化初期のVFAなど易分解性有機物の分解が多い時期では、Bacillusに属するバンドが強く観察された一方で、有機物が枯渇した堆肥化後期においてはセルロース分解能を持つCytophagaの割合が高まる傾向にある。

[成果の活用面・留意点]

  1. 堆肥化に伴う微生物群集の推移や有機物分解および硝化反応の変動に関する新たな知見は、環境負荷の少ない家畜排せつ物管理手法開発の端緒となる。また、温室効果ガスであるN2O発生に関わる微生物生態の解明にも有効である。
  2. 再現性の高い情報を得るため、堆肥からのDNA抽出の際には腐植酸等の混入によってPCRの阻害が起こらないよう抽出法に配慮する必要がある。

[具体的データ]

[その他]




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