ジャガイモ粉状そうか病菌の致死条件
[要約]
ジャガイモ粉状そうか病菌の湿熱での致死条件は55℃で17日、60℃で14日、65℃で10日、70℃で4日、75℃〜80℃で24時間、90〜95℃では1時間であり,また牛十二指腸内容液処理によっても死滅しない。
[キーワード]
[担当]道立十勝農試・生産研究部・病虫科、北海道農研・バレイショ栽培技術研究チーム
[代表連絡先]電話0155-62-9812
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
ジャガイモ塊茎残渣(でん粉粕や表皮残渣など)には粉状そうか病菌Spongospora subterranea f.sp. subterraneaが耐久体(休眠胞子)の集塊である胞子球の形態で混在していると考えられる。これらの残渣は堆肥の材料や牛の飼料として利用された後、前者は直接、後者は給餌した牛の糞が堆肥化されて畑地に還元される場合があるほか、この残渣を加熱処理して畑地に還元する場合もあり、消毒が不十分なジャガイモ塊茎残渣を安易に畑地に還元すると病原菌を拡散させる危険性が高い。しかし、現状では本菌の確実な消毒のための処理条件が明確ではない。そこで粉状そうか病菌の効果的な殺菌技術の開発に資するため、その死滅条件についての知見を得ることを目的とする。
[成果の内容・特徴]
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粉状そうか病菌を安定して死滅させうる湿熱処理温度と日数の組み合わせは、55℃で17日、60℃で14日、65℃で10日、70℃で4日、75℃〜80℃で24時間、90〜95℃では1時間であり、これらが湿熱による致死温度条件と考えられる(図1)。この致死温度条件は、他の植物病原菌と比較して明らかに高い。
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ジャガイモのでん粉粕のサイレージ化は,混入したジャガイモ粉状そうか病菌に対して殺菌的に作用し,4℃、15℃および25℃のいずれの温度条件においても、貯蔵期間が長くなるにしたがいでん粉粕中の粉状そうか病菌量は低下したが(データ未掲載)、本条件では完全には死滅しなかった。
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粉状そうか病菌は牛の十二指腸内容液に浸漬し、38℃で60分培養しても死滅しない。また十二指腸内の酸性条件に相当する処理(塩酸酸性、pH2、2時間;図1)でも死滅しない。
[成果の活用面・留意点]
- ジャガイモ粉状そうか病菌に汚染されているジャガイモ塊茎の残渣などを施設等において消毒する際の処理条件の指標として利用できる。
平成20年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「ジャガイモ粉状そうか病菌の致死条件」(指導参考)[具体的データ]
[その他]
研究課題名:ジャガイモモップトップウイルスの汚染状況調査とそれを媒介する粉状そうか病菌の致死条件の検討、
北海道におけるジャガイモモップトップウイルス土壌汚染緊急調査、
ジャガイモ粉状そうか病ならびにジャガイモモップトップウイルス伝搬防止技術の開発による馬鈴しょでん粉粕の飼料利用拡大
予算区分:民間受託、重点強化
研究期間:2007〜2008年度
研究担当者:清水基滋、中山尊登
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