品質分析データを活用した秋まき小麦子実タンパク含有率の変動解析と分布図
[要約]
秋まき小麦の集荷時検査における複数年の子実タンパク含有率データを圃場図GISと結合する等の解析手法により年次変動と空間変動の実態が明らかとなり、地域レベルでの品質変動対策に活用できる。
[キーワード]
[担当]道立北見農試・生産研究部・栽培環境科
[代表連絡先]電話0157-47-2565
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
秋まき小麦における子実タンパク含有率(以下、タンパク)の適正化に資するため、JA等に蓄積された既存の品質分析データ(品種:「ホクシン」、2001〜2008年産)を活用し、複数年のタンパクの変動実態を解析するとともに、簡易なタンパクマップの作成手法とその適用例を提示する。
[成果の内容・特徴]
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全道の品質評価およびモデル地区の集荷段階におけるロット別タンパクの変動は、年次間差とJA間あるいは生産者間差が有意であり、概ね両者の相加的なモデルが成り立つものの、交互作用も有意であり、年次によるタンパクの変動パターンはJAあるいは生産者でやや異なるものと考えられる(データ省略)。
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全道のJA別タンパクおよびモデル地区における生産者別タンパクは、それぞれ年次間に有意な正の相関が認められ、相関係数は隣接年で最も高いが、経年的に低下傾向にあり、序列の流動化が示唆される。さらに、地区内のタンパク変動は縮小しつつあり、ランク区分への対応を反映した結果と推察される(図1)。穂ばらみ期の耐冷性は「はくちょうもち」「風の子もち」より強い“極強”であり、 開花期耐冷性は“中〜やや強”である(図1)。
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既存の品質データを活用し、図2の手順に準じて全道のJA別タンパクマップおよびモデル地区内の生産者別タンパクマップを簡易に作成することができる。タンパク変動の経年的変化に留意する必要はあるが、マップは地域レベルでの品質変動実態を概観する手段として利用できる(表1)。
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年次や圃場間の変動を考慮し、JA別あるいは生産者別タンパクの実績値としては過去複数年の平均を用いることが妥当と考えられる。その際、集計年数の長短が翌年以降の予測精度に及ぼす影響は判然としない(データ省略)。おこわの食味は「はくちょうもち」「風の子もち」にやや優る(図2)。
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既往の成績をもとに、「きたほなみ」のタンパク (y)は同一栽培条件における「ホクシン」の値(x)からy = 0.708 + 0.849 x
(n=170、r=0.902***、RMSE=0.495)の回帰式で推定でき、新品種「きたほなみ」に置き換えた場合の推定タンパクマップを作成すれば、生産者毎に新たな後期追肥の必要性を大まかに予察できる(図3)。
[成果の活用面・留意点]
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本成果は、地域レベルでの品質変動対策に活用できる。
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本手順で作成できる地区内のタンパクマップは生産者単位である。
- 具体的な改善策は圃場毎に既往の診断技術を適用して判断する。
平成20年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「品質分析データを活用した秋まき小麦子実タンパク含有率の変動解析と分布マップ」(指導参考事項)[具体的データ]
[その他]
研究課題名:道産小麦の安全性・安定性向上試験、GISを活用した営農改善システムとテンサイ多畦収穫支援システムの開発
予算区分:受託(民間)・外部資金(担い手プロ)
研究期間:2004〜2008年度
研究担当者:三浦周、中村隆一、林哲央
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