北海道における水稲カドミウム濃度の変動要因と低減対策
[要約]
土壌カドミウム濃度が概ね0.3mg/kg以上の圃場において、出穂期後3週間の湛水、「ななつぼし」の作付け、青米の発生を抑える栽培管理と青米の除去を行うことがリスク低減対策として有効である。
[キーワード]
[担当]道立中央農試・環境保全部・農業環境科
[代表連絡先]電話0123-89-2582
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
コーデックス(Codex:国際食品規格委員会)の新基準(精米で0.4mg/kg)に対応し、北海道産米の安心・安全と信頼性を高めるため、道内の水稲カドミウム濃度の変動要因を明らかにするとともに、低水準(精米で0.2mg/kgを目安とする)に保つための対策を示す。
[成果の内容・特徴]
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土壌カドミウム濃度と精米カドミウム濃度との関係はばらつきが大きいが、土壌カドミウム濃度が0.3mg/kg以下では、いずれの精米カドミウム濃度も0.2mg/kg以下であり、対策を実施する必要があるのは、主として土壌カドミウム濃度が0.3mg/kg以上の圃場と考えられる(図1)。
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出穂期以前よりも出穂期以降の落水条件が、より水稲カドミウム濃度に影響を及ぼす。出穂期から3週間程度の湛水が最も重要であり、やむを得ず中干しを行う場合もこの期間は避けるべきである(表1)。
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道内のうるち主要4品種の精米カドミウム濃度の序列は、「きらら397」>「ふっくりんこ」・「ほしのゆめ」>「ななつぼし」であり、「ななつぼし」の平均精米カドミウム濃度は「きらら397」の約半分であることから、土壌カドミウム濃度の高い圃場では「ななつぼし」の作付けが、低減策として有効である(図2)。
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青米のカドミウム濃度は全般に高い(図2)。このため、遅れ穂が出ないような栽培管理が重要である。青米歩合が高い場合には、色彩選別による除去が有効と考えられる。
[成果の活用面・留意点]
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土壌カドミウム濃度が概ね0.3mg/kg以上の圃場を対象とする。
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出穂期後3週間の湛水にあたっては、還元状態を維持するため、土壌表面が乾燥するような間断かんがいは避ける。
平成20年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「北海道における水稲カドミウム濃度の変動要因と低減対策」(指導参考)[具体的データ]
[その他]
研究課題名:カドミウムの国際基準に対応した水稲栽培指針の策定
予算区分:道費
研究期間:2005〜2008年度
研究担当者:中津智史、中本洋、松本武彦、五十嵐俊成(道南農試)、菅原彰(同左)
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