アスパラガス調製残渣の機能性成分を活用した加工食品の開発
[要約]
アスパラガス調製残渣は糖濃度が高く、イヌリンを含む。ブランチング後に凍結乾燥・粉末化することにより甘みや機能性が維持できる。イヌリンは大腸発酵を促進し、酪酸生成量の増加に効果がある。調製残渣粉末は各種の加工食品へ利用が可能である。
[キーワード]
アスパラガス、調製残渣、機能性成分、イヌリン、大腸発酵
[担当]道立花野技セ・研究部・栽培環境科・野菜科、名寄市立大学、ロバ菓子司、ツカモトミルズ、植松電機、もち米の里ふうれん特産館、ヒライ、米澤製麺所
[代表連絡先]電話0125-28-2800
[区分]北海道農業・水田・園芸作
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
アスパラガス若茎の調製残渣(出荷規格で切断した下部)の内部成分の動態を明らかにするとともに、成分の機能性を評価する。また、調製残渣の粉末品を活用し、機能性成分および色・風味を活かした商材を開発する。
[成果の内容・特徴]
- アスパラガス調製残渣は糖濃度が約2〜4%と若茎より高く、イヌリンを平均で約0.5%含み、食品に一部を加えて使用する場合でも甘みや機能性を期待できる。調製残渣に糖、イヌリンが安定的に高く含まれる収穫時期は4月下旬〜5月下旬である(図1)。
- 調製残渣に含まれる糖、イヌリン等の内部成分を高く維持する条件は次の通りである。
- 調製残渣は収穫後5℃で保存し48時間以内にブランチング処理(100℃、8分)を行う。収穫後20℃で保存する場合は24時間以内にブランチング処理を行う。
- ブランチング後の調製残渣は-20℃以下で保存し、3か月以内の乾燥・粉末化が望ましい。乾燥方法については変色や内部成分の低下を防ぐために凍結乾燥を行う。
- 乾燥・粉末化後は、20℃以下で保存し、退色を防ぐために遮光し密封保存する。更 に、ビタミンC含量の低下を防ぐためには脱酸素剤を入れる(表1)。
- アスパラガス調製残渣粉末の黄緑色は、50℃以下では24時間、100℃では30分間加熱しても変化が小さく、アスパラガスの色合いを活かした食品への利用が可能である。調製残渣粉末に含まれる糖は100℃以下、イヌリンは160℃以下の加熱で変化が小さい。
- 動物実験によるラットへのアスパラガス調製残渣の投与は大腸発酵を促進する効果を示し、このときの酪酸生成量の増加から、アスパラガス調製残渣は大腸疾病の発症を予防する食品素材となりうると判断される。盲腸内酪酸濃度の増加はアスパラガス調製残渣の熱水可溶性成分および不溶性成分で認められ(表2)、熱水可溶化成分に含まれる食物繊維の主体であるイヌリンが腸内細菌の発酵基質として利用されると考えられる。
- アスパラガス調製残渣の粉末品を0.8〜5%用いた加工食品として、大福、おかき、プリン、ロールケーキ、そば、ラーメン等の開発が可能である(写真1)。
[成果の活用面・留意点]
- 未利用資源の有効活用によるアスパラガス産地の地域活性化に資する。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「アスパラガス調製残渣の機能性成分を活用した加工食品の開発」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
研究科題名:アスパラガス調製残渣の機能性成分を活かした加工食品の開発
新乾燥技術による高機能・低価格アスパラガス調製残渣粉末の開発
予算区分:道費(重点領域)、外部資金(経済産業省)
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:大塚省吾、地子立、藤倉潤治(道立花野技セ)、西村直道(名寄市立大学)、鹿内悌三(ロバ菓子司)、鎌田英宏(ツカモトミルズ)、安中俊彦(植松電機)、山田卓良(もち米の里ふうれん特産館)、平井秀明(ヒライ)、米澤末廣(米澤製麺所)
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