だいず「ユキホマレ」のセンチュウ抵抗性を強化した新品種候補「十育247号」
[要約]
「十育247号」は、北海道の基幹品種「ユキホマレ」のダイズシストセンチュウ抵抗性を強化した系統で、農業特性および加工適性はほぼ同等であるが、既存のレース3抵抗性品種で対応できない圃場でも栽培できる。
[キーワード]
ダイズ、ダイズシストセンチュウレース1抵抗性、DNAマーカー選抜、戻し交配
[担当]道立十勝農試・作物研究部・大豆科
[代表連絡先]電話 0155-62-2431
[区分]作物、北海道農業・畑作
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
「ユキホマレ」は、農業特性に優れ、実需者からも一定の評価を得ていることから、作付けが拡大し、北海道の基幹品種となっている。しかし近年、道央・上川地方において、豆類の作付け偏重や短期輪作により、「ユキホマレ」を含む既存のレース3抵抗性品種へのセンチュウ被害が顕在化し深刻な問題となっている。現在、これらのセンチュウ対策に有効なレース1抵抗性品種はないため、同抵抗性の品種が強く要望されている。そこでDNAマーカー選抜を利用した戻し交配により、既存のレース3抵抗性品種にレース1抵抗性を導入し、シストセンチュウレース1・3抵抗性を有するだいず品種を育成する。
[成果の内容・特徴]
- 「十育247号」は、「十系871号」のダイズシストセンチュウレース1抵抗性をDNAマーカー選抜を利用した戻し交配により、「ユキホマレ(十育233号)」に導入し育成した系統である。
- ダイズシストセンチュウレース1・3抵抗性であり(図1,表2)、既存のレース3抵抗性品種で対応できない圃場でも栽培できる。
- 百粒重は、健全圃場では「ユキホマレ」に比べやや軽いが、センチュウ被害発生圃場では同等であり、品質の低下も認められない(図1)。
- その他農業特性および加工適性は「ユキホマレ」と同等であり(表1、2、3)、生産者は従来の「ユキホマレ」と同じ栽培技術が適用でき、実需者も「ユキホマレ」と同様の加工技術の利用が可能となる。
[成果の活用面・留意点]
- 道南を除く北海道の大豆栽培地帯のうち、「ユキホマレ」等のダイズシストセンチュウレース3抵抗性品種にセンチュウ被害が発生している地域にセンチュウ対策として導入する。普及見込み面積は300 haである。
- ダイズシストセンチュウレース1・3抵抗性を有するが、より病原性の強いセンチュウレースの出現リスクを回避するため、連作及び短期輪作は避ける。
- ダイズシストセンチュウ発生地域への導入に際しては、優占レースを確認し、「スズヒメ」にシストの寄生する圃場への作付けは避ける。
- その他栽培上の注意は「ユキホマレ」に準ずる。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「だいず新品種候補「十育247号」」(普及推進)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:寒地北東部向け耐冷性、センチュウ抵抗性、機械化適性、高品質、多収品種の育成、低温着色及びシストセンチュウに複合抵抗性を有する系統の育成
予算区分:指定試験、新農業展開プロ
研究期間:1999〜2009年度
研究担当者:三好智明、白井滋久、湯本節三、田中義則、萩原誠司、黒崎秀樹、山崎敬之、鈴木千賀、大西志全、山口直矢
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