中晩生で品質に優れたシストセンチュウ抵抗性でん粉原料用ばれいしょ「北育13号」
[要約]
「北育13号」はジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つ中晩生のでん粉原料用系統である。でん粉のリン含量、離水率は「コナフブキ」より低く、でん粉品質は「紅丸」並で「コナフブキ」より優れる。枯ちょう期およびでん粉収量は「コナフブキ」並である。
[キーワード]
ばれいしょ、でん粉、リン含量、離水率、中晩生、シストセンチュウ
[担当]道立北見農試・作物研究部・馬鈴しょ科
[代表連絡先]電話0157-47-2146、電子メールseika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分]作物、北海道農業・畑作
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
でん粉原料用ばれいしょの安定生産のためにはWTO、FTA/EPA交渉への対応や需要に応じた生産の推進が求められている。ばれいしょでん粉特有の性質を活かして利用される固有用途は、糖化用途より高値で取引されているが、「コナフブキ」のでん粉品質では実需の要望に十分応えられなくなってきている。今後も安定的にばれいしょでん粉を生産していくためには、固有用途向けの需要拡大が可能なでん粉原料用品種の育成が緊急の課題となっている。また、汚染地域が拡大しているジャガイモシストセンチュウも安定生産上の大きな問題である。これまでにもでん粉原料用の抵抗性品種が育成されてきたが、枯凋期が遅かったり、収量性や特性が十分でなかったため栽培面積はそれほど増加していない。
そこで、でん粉品質に優れ、中晩生で収量が「コナフブキ」並のジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種の育成を行う。
[成果の内容・特徴]
- 「北育13号」は、1998年に、でん粉品質の優れる「紅丸」を母、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性遺伝子H1を持つ高でん粉価系統「根育39号」を父として、人工交配を行い、以後選抜を進めてきた系統である。
- でん粉特性は、リン含量、離水率が「コナフブキ」より低く、でん粉品質は「紅丸」並で「コナフブキ」より優れる(表1)。
- 枯ちょう期は「コナフブキ」並の“中晩生”である(表2)。
- 「コナフブキ」に比べ、上いもの平均重が軽く、でん粉価はやや低いが、上いも数が多いため、でん粉重は同等である(表2)。
- 塊茎の肉色は“紫斑”であるが、でん粉の白度は「コナフブキ」並である(表1、3)。
- 休眠期間は「コナフブキ」より短い(表3)。
- ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つ(表3)。
- 塊茎腐敗抵抗性は「コナフブキ」より弱い(表3)。
[成果の活用面・留意点]
- 北海道のでん粉原料用ばれいしょ栽培地帯に適応する。普及見込み面積は1,000haである。
- 「コナフブキ」より収穫時の掘り残しが多く、野良生えの発生が増える懸念があるので、秋起こしを控えるのが望ましい。
- 多湿条件等で減収する場合があるので、透排水対策に努めるとともに、干ばつまたは湿害を受けやすい圃場での栽培を控える。
- 休眠期間が“やや短”であるので、収穫後の種いもの保管に留意する。
- 塊茎腐敗抵抗性が“弱”であるので、疫病防除を適切に行う。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「ばれいしょ新品種候補「北育13号」」(普及奨励)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:寒地北東部向け、病害・線虫抵抗性、でん粉及び加工食品原料用のばれいしょ品種の育成
予算区分:指定試験、受託
研究期間:1998〜2009年度
研究担当者:江部成彦、千田圭一、池谷聡、藤田涼平、伊藤武、入谷正樹、田中静幸、大波正寿、古川勝弘
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