畑作地帯におけるなたねの導入条件と栽培法
[要約]
畑作地帯になたね栽培を導入できる収量下限値は春まき180kg/10a、秋まき280kg/10aであり、春まきでは「キラリボシ」、「ななしきぶ」を4月下旬までに播種、秋まきでは「キザキノナタネ」を8月下旬〜9月上旬に播種を行う。
[キーワード]
[担当]道立十勝農試・生産研究部・栽培システム科、経営科、作物研究部・畑作園芸科
[代表連絡先]電話0155-62-2431
[区分]北海道農業・畑作
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
北海道の畑作地帯におけるなたねの生産費とその経済性を明らかにし、なたねの導入条件を整理するとともに、各作型(春まき・秋まき)における品種の適応性を検討し、現地実態調査からなたねの栽培法について検討する。
[成果の内容・特徴]
- 北海道の畑作地帯におけるなたね栽培は、機械作業が大半を占めるため労働費が府県産を大きく下回っており、全算入生産費は府県産の86%の水準である(表1)。また、販売価格が130円/kgの際に再生産を補償する収量は、268〜287kg/10aである。
- 導入実態に基づく経営モデルの分析結果から、春まき栽培では180kg/10a以上、秋まき栽培では280kg/10a以上に達すると、経営全体の所得増加に貢献する (図1)。特に、秋まき栽培ではてんさい直播栽培のような省力化を可能にする作物を採用できない場面での導入が有効である。
- 春まき栽培では春まき適性の高い「キラリボシ」、「ななしきぶ」を4月下旬までに播種することにより、秋まき小麦の前作になり得る9月中旬までに収穫でき、収量は180kg/10a以上となる可能性がある(表3)。
- 秋まき栽培の現地圃場では、「キザキノナタネ」を8月下旬〜9月上旬に播種し、適期収穫することにより、280kg/10a以上の収量を得る事例が認められた。しかし、9月中旬播種で土壌凍結による断根や雪腐病の発生による越冬率が低下したため廃耕となった事例や、草地跡の栽培で雑草害の影響で低収となった事例があった(表2)。
[成果の活用面・留意点]
- 菌核病に強く、作型に適した品種を選択する。なお、今回調査した品種は(独)東北農業研究センターが育成した品種である。
- 春まき栽培では害虫が多発することがあるので、適切な防除に努める。また、秋まき栽培では雪腐病が発生することがあるので、適期播種と融雪促進に努める。
- 春まき栽培における2カ年の現地実態調査では、春まき適性の低い「キザキノナタネ」や菌核病に弱い導入品種の作付などにより150kg/10a以下の収量であった。
- 早刈りや刈り遅れは収穫損失の増加につながることから、適期収穫に努める。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「畑作地帯におけるなたねの導入条件と栽培法」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:十勝地域に適したなたね栽培技術の確立
予算区分:受託(民間)
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:梶山努、白井康裕、松永浩、原圭祐、西村直樹、沢口敦史
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