バレイショ収穫時に発生する塊茎打撲調査に加速度センサは有効である
[要約]
加速度センサを利用することにより、バレイショの収穫作業時において問題となっている塊茎打撲の発生要因調査ができ、土塊量のデータを加えることにより発生率の推測が簡易に可能である。
[キーワード]
[担当]北海道農研・バレイショ栽培技術研究チーム、北海道畑輪作研究チーム
[代表連絡先]電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
[区分]北海道農業・畑作、共通基盤・作業技術
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
バレイショの収穫時において、塊茎同士や石礫などと衝突した場合に組織が破壊されると酵素反応による変色およびコルク化が発生(打撲)する。これは製品の歩留まり低下と品質の劣化を引き起こすため、重要な問題の一つとなっている。通常の塊茎打撲調査は、塊茎を大量に回収した後、変色反応が起きるまで一ヶ月程度保存し、全て剥皮するため、時間と労力がかかる。その調査の簡易化を目的として、現場では市販の加速度センサ(図1、左上下図)の導入が進んでいるが、加速度の目標値などの指標が無く、有効性の報告も無い。そこで、加速度センサの利用が塊茎打撲の調査に有効であるかを検討する。
[成果の内容・特徴]
- 全ての年次において、打撲発生率とハーベスタ内において測定された加速度の全合計値(以下,積算加速度)には正の相関関係が見られる(図2)。この積算加速度を比較することにより、打撲発生率の相対的評価が簡易に可能である。
- 本試験に用いた加速度センサはリアルタイムでデータが取得できる特徴をもつ。加速度センサの位置を目視で確認することにより、3つのコンベヤ(図1、右図)のどの部位で発生したかをその場で判断し、記録することができる。そこで、それぞれのコンベヤにおいて発生した積算加速度を算定する。さらに塊茎打撲の発生要因と考えられる独立変数を追加し、線形一次の重回帰分析を行う。その結果、第一コンベヤにおける積算加速度と回収される土塊量が塊茎打撲発生率に対して有意(表1)となり、この2つが打撲発生の主要因である。
- 有意となった2つの独立変数から、
打撲発生率[%] = 0.28×第一コンベヤにおける積算加速度[G]+7.33×土塊量[kg/m2]という推測式が求められる(決定係数は0.52)。一例として、第一コンベヤにおける積算加速度が30Gであった場合、土塊量が0kg/m2であれば8.4%、1.5kg/m2であれば19.4%の打撲発生が推測される(図3)。これより、いずれの年次においても、加速度の調査と土塊量の測定だけで、簡易に打撲発生率が推測できる。
[成果の活用面・留意点]
- 同時に投入できる加速度センサは一つであり、ハーベスタ内を通るルートは一定ではなくばらつきが大きいため、発生加速度の調査には3回以上の反復が必須である。
- 今回の推測式は記載した機材、供試品種「トヨシロ」、平均地温20.3℃の場合であり、収穫時の地温、品種、塊茎の含水率および熟度などから、塊茎打撲発生率が異なる可能性がある。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:病虫害複合抵抗性品種を中核とした新栽培体系による馬鈴しょ良質・低コスト生産技術の開発
中課題整理番号:211e
予算区分:委託プロ(輪作、担い手)
研究期間:2005〜2009年度
研究担当者:山田龍太郎、森 元幸、大津英子、石田茂樹
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