永続性に優れる早生の2倍体アカクローバ「北海13号」
[要約]
アカクローバ「北海13号」は、早生の2倍体で、永続性に優れ、オーチャードグラスおよび極早生チモシーと混播した場合、「ナツユウ」と比べ4、5年目でもアカクローバ収量を高く維持できる。
[キーワード]
アカクローバ、採草利用、混播適性、永続性、競合力、2倍体
[担当]北海道農研・寒地飼料作物育種研究チーム
[代表連絡先]電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
[区分]北海道農業・畜産草地、畜産草地
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
アカクローバは安定した定着性と土壌適応性の高さから北海道の基幹的な混播用マメ科牧草であるが、短年生であるため2,3年目の収量ピーク後は急速に衰退する。また、混播時の合計収量に対するマメ科牧草の割合であるマメ科率は30?40%が適正範囲とされているが、夏季の干ばつ条件ではその範囲を超え、イネ科牧草を抑圧することもある。そこで、オーチャードグラスならびに極早生チモシーとの混播において適正なマメ科率で、より長期に利用が可能な永続性に優れたアカクローバの早生の2倍体品種を育成する。
[成果の内容・特徴]
- 開花始日は6月20日と標準品種「ナツユウ」と同日であり、早生に属する (表1)。
- 競合力は2番草刈取り時の着花茎出現頻度が0.8ポイント上回り、草丈が4cm高く、さらに冠部被度も5%高いことから「ナツユウ」よりも強い (表1)。
- 永続性は「ナツユウ」よりも最終年の個体密度が平方メートル当たり1.8株多く、3番草刈取後の秋の被度で5% (表1)、また、アカクローバ収量の後半(4,5年目合計)も相手イネ科牧草の種類に関わらず多いことから (図1)優れる。
- 追播適性は翌年のマメ科率と個体密度がやや高く、優れる傾向がみられる (表1)。
- 耐寒性は「やや強」、主要病害である菌核病に対する罹病程度および主要成分である粗蛋白質も同程度である (表1)。
- オーチャードグラスとの混播組合せは、総乾物収量は同等であるがマメ科率が25% (図2)と「ナツユウ」よりも混播適性が良好で、優れる。
- 極早生チモシーとの混播組合せは、総乾物収量がやや多く、試験期間の総乾物収量に対するマメ科率は36%(図2)と混播適性も良好で、優れる。
- 早生チモシーとの混播組合せは、根釧では2番草のマメ科率は42%とやや高く、番草間の変動幅がやや大きいものの (表2)、総乾物収量はやや多く、マメ科率は30%(図2)と混播適性が良好で、優れる。一方、根釧地域以外では2番草のマメ科率が59%と高く (表2)チモシーに対する抑圧がみられるので、組合せは適当でない。
[成果の活用面・留意点]
- 普及対象地域は北海道および北東北地域で、普及見込み面積は北海道一円30,000ha。
- 競合力が強いため、混播するイネ科牧草はオーチャードグラスおよび極早生チモシーを基本とする。早生チモシーとの混播は夏季湿潤な根釧地域等に限定し播種量を抑える。それ以外の地域では再生の穏やかな品種を利用する。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:大規模草地・飼料畑の活用のための高TDN飼料作物品種の育成
中課題整理番号:212c.2
予算区分:基盤、道費、委託プロ(えさ)
研究期間:1991?2009年度
研究担当者:奥村健治、磯部祥子、我有 満、澤井 晃、内山和宏、高田寛之、廣井清貞、山口秀和、松村哲夫、林 拓(道立根釧農試)、佐藤尚親(北海道農政部)、牧野司(道立根釧農試)、出口健三郎(道立根釧農試)、山川政明(道立畜試)、澤田嘉昭(元道立畜試)、藤井弘毅(道立北見農試)
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