枝肉重量に関するDNAマーカーを利用した黒毛和種の選抜技術
[要約]
枝肉重量に関する黒毛和種の選抜には14番染色体上にあるDNAマーカー(CW1) が利用できる。
[キーワード]
黒毛和種、枝肉重量、選抜、DNAマーカー、QTL、CW1
[担当]道立畜試 家畜研究部 肉牛育種科
[代表連絡先]電話0156-64-5321
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
DNAマーカー育種は選抜精度を向上させ、世代間隔を短縮できるなど、育種改良の効率化に貢献できる。DNAマーカー情報を用いた種雄牛の選抜や繁殖雌牛の改良への応用を目的に、黒毛和種の枝肉形質に関する量的形質遺伝子座(QTL)の同定と効果検証を行なう。
[成果の内容・特徴]
- 道内で広く供用されている黒毛和種3家系についてQTL解析を行なった結果、種雄牛A家系では14番染色体上に枝肉重量QTLが検出され、その有意性を示すF値は著しく高い(図1)。
- 検出した枝肉重量QTL領域は溝下ら(J.Anim. Sci.:2004,Mammalian Genome:2005)により検出され領域が限定されたCW1の近傍にある。解析した3家系についてそのタイプ別に枝肉重量を比較して効果検証した結果、CW1がQホモタイプ(Q/Q) の枝肉重量はヘテロタイプ(Q/-)より種雄牛A家系では約11kg、B家系では約13kg、C家系では約17kg大きい(表1)。
- 肥育素牛時の市場データと照合できた牛の出荷体重の比較では、CW1タイプ別の肥育素牛出荷体重は大きい方からQ/Q:305kg、Q/-:296kg、Qを持たないタイプ(-/-):288kgの順であり、道内4地域の9農場で調査した繁殖雌牛における枝肉重量の育種価データの比較では、CW1タイプ別の枝肉重量育種価は大きい方からQ/Q:34.6、Q/-:21.9、-/-:17.3の順となり、CW1の効果は10カ月齢前後の肥育素牛の体重および繁殖雌牛の育種価でも認められる(表2)。
[成果の活用面・留意点]
- 種雄牛や高能力供卵牛を育成する機関・団体が、黒毛和種の選抜にCW1の情報を利用することによって、早い段階で枝肉重量に関する選抜が可能となる。
- CW1の枝肉重量に対する効果については血統によりその程度に差がある。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「枝肉重量に関するDNAマーカーを利用した黒毛和種の選抜技術」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:牛の選抜におけるDNAマーカー情報の活用
予算区分:道費
研究期間:2006〜2009年度
研究担当者:内藤 学、藤川 朗、森井泰子、酒井稔史、鹿島聖志、杉本昌仁(道立畜試)高須賀晶子、渡邊敏夫、横内 耕(動物遺伝研)
目次へ戻る