乳牛の放牧期とうもろこしサイレージ少量給与の効果と給与モデル
[要約]
放牧主体の酪農経営において、ロールベールによる放牧期のとうもろこしサイレージ乾物2〜3kgの給与は、栄養バランスの改善に効果的であることがバルク乳のMUN濃度を指標として現地農家で実証され、飼料給与モデルから飼料費の節減も見込まれる。
[キーワード]
[担当]道立上川農試・天北支場・技術体系化チーム
[代表連絡先]電話01634-2-2111
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
乳牛の放牧飼養では相対的にエネルギー不足となりやすく、繁殖や健康等に悪影響を及ぼす場合がある。栄養バランスの改善策のひとつとして、とうもろこしサイレージの給与が有効とされているが、夏の放牧期に取り出し量が少ない場合、バンカサイロ等では保存性に問題がある。一方、とうもろこしロールベールサイレージ(CS)は安定した品質を保持できて移動も可能であり、放牧期に給与できる。そこでCSを放牧期に少量給与し、栄養バランスの指標とされる乳中尿素窒素(MUN)濃度が抑制されることを現地農家6戸において実証し、飼料給与モデルを示す。
[成果の内容・特徴]
- 実証農家におけるMUN濃度の平均値は12〜18mg/dlで、CS給与前・中・後とも秋>夏>春の順で高い(図1)。
- 放牧期にCSを乾物で2〜3kg給与すると、放牧草の採食量を落とさずにTDN/CP比が高く改善され、バルク乳のMUN濃度が低下する。特にMUN濃度が高まる夏と秋では基準値12〜16mg/dlにおさめる効果が大きく、乳蛋白質率は3.1〜3.4%の範囲で基準値を満たす(表1、図1)。
- 宗谷管内のバルク乳のMUN濃度と乳蛋白質率は、放牧依存度が高い昼夜放牧農家で大きく変動する。両成分の変動には時期的差があることから、CSなどの併給飼料給与による栄養改善対策は、MUN濃度が高く乳蛋白質率が低い7月中旬〜9月上旬と両者が高い9月中旬〜10月下旬に区分して行うことが必要と考えられる(図2)。
- 以上に基づき、夏と秋の放牧期における栄養バランス適正化のため、1日1頭当たり乳量27kg、総乾物摂取量19kg、CS乾物給与量2.4kg条件下での飼料給与モデルを示す(表2)。この給与モデルによれば、夏はCS2.4kgの給与により濃厚飼料2.2 s、牧草サイレージ2.1sを減らせ、飼料費が55円節減される。
[成果の活用面・留意点]
- 本成果は一般のとうもろこしサイレージにおいても活用できる。
- CSの給与時期は、バルク乳集乳旬報のMUN濃度と乳蛋白質率及び放牧草の採食状況を確認して決める。
- CSを初めて給与する時には採食不良が認められる場合があるため、採食状況を確認する。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「乳牛の放牧期とうもろこしサイレージ給与の効果と栄養バランス適正化のための給与モデル」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:道北・草地酪農における放牧期とうもろこしサイレージ給与技術の実証
予算区分:道費(一般)
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:吉澤 晃、山下一夫、齋藤博昭、宮崎隆章、井内浩幸、新宮裕子、中村直樹
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