土壌診断に基づく施肥を可能とする自動単肥配合機の開発
[要約]
単肥から混合肥料の効率的な調製が可能となる単肥混合機及び単肥自動供給装置からなる自動単肥配合機を開発した。約5分程度の混合で均一な混合肥料を作ることが可能であり、混合による肥料の固結も見られず、再密封して保管することも可能である。
[キーワード]
[担当]道立根釧農試・研究部・酪農施設科
[代表連絡先]電話0153-72-2154
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
土壌診断を行うことにより、農場単位で詳細な施肥計画が可能であるが、圃場の数が多くなるほど多くの銘柄の化学肥料を準備する必要がある。この解決策として、単肥を混合して調製することが考えられるが、そのための大型の機械はなく、その作業の複雑さが課題となっている。そのため、重量計が装備された単肥混合機と設定量に応じて単肥を自動供給する単肥供給装置を組み合わせた単肥配合機を開発し、その性能を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 単肥混合機はトラクタのPTO動力によるオーガの回転と傾斜を利用して肥料を混合する。油圧で後方を持ち上げて前方に傾斜させ、底部のオーガの回転で単肥をホッパ後方へ搬送し、傾斜で前方へ流れ落ちることを繰り返すことで混合する。単肥自動供給装置は供給装置とその制御装置からなり、単肥混合機の重量を計測して、設定量で自動的に供給を停止する仕組みである(表1)。
- 混合した後に排出したサンプルの重量割合の変動係数は試験1の3分間混合が12.3〜38.2%、同5分間混合が4.1〜9.5%、試験2の5分間混合が3.5〜10.1%である(表2)。また、試験1の7分間混合時の1分ごとのサンプルの組成の変化から、単肥を5分間混合することにより、均一な混合肥料を作ることが可能と判断される(図1)。
- 肥料の粒度割合は5分間混合の場合、粒径2.00〜4.00mmの分布が原料に比べて試験1では4.9〜6.6ポイント低下し、試験2では0.6〜0.7ポイント低下し、その一方で1.18〜2.00mmが増加する傾向にあるが、粉状となる1.18mm未満の増加は僅かであり、固結も見られない(表3)。
- 混合時の所要動力は、最大30.0kW(40.8PS)である。また、混合機からの排出速度は8.3〜12.8kg/秒である。
- 混合後の肥料(硫安、ダブリン、硫加;水分1.37〜1.48%)を100日までフレコンバッグに密封保存しても水分は1.17〜1.46%とほとんど変化せず、固結も見られない。
- 単肥自動供給装置による肥料(水分4.26%、かさ密度950.3g/L)の供給速度は3.0〜3.1kg/秒であった。設定量に対する供給量の誤差は最大で±1kgであり、供給精度は高かった。
- 単肥混合機1台、単肥自動供給装置(供給装置3台、制御装置1台)を用いると、単肥投入から混合・密封までのサイクルタイムは30分程度である。
[成果の活用面・留意点]
- 土壌診断に基づく施肥対応に活用できる。
- 単肥混合機のみの活用も可能である。
- 混合する単肥は粒状とし、銘柄選択に関しては、吸湿性や反応性の高い肥料は避ける。
- 混合は高湿環境下を避け、雨などの水が直接あたらない場所で行う。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「土壌診断に基づく施肥を可能とする自動単肥配合機の開発」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:酪農地帯の環境・観光と共存可能な低コスト液状ふん尿施用技術
予算区分:外部資金(実用技術開発)
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:堂腰 顕、吉田邦彦
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