スラリー散布に伴う臭気問題の発生抑制に向けたゾーニング手法による計画策定
[要約]
酪農地帯ではスラリー散布時の臭気が同時期に広く発生する。実行可能な対策立案には、散布地域をゾーンに分けて対策するなど、酪農場の費用負担緩和に配慮した1次計画を作成し、これに酪農場を含む学習会活動によって検討を加え、実行計画を策定する。
[キーワード]
[担当]道立根釧農試・研究部・酪農施設科、草地環境科、経営科、技術普及部、道立畜試・環境草地部・畜産環境科
[代表連絡先]電話0153-72-2004
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
酪農地帯のスラリー散布に伴う臭気問題は、多くの酪農場が同時期に散布作業を行い、広大な草地から面的に臭気が発生するという特徴を有しており、これらの特徴に対応した臭気問題抑制策の計画手法を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- スラリー散布に伴う臭気対策では、A.悪臭防止法の規制地域外のため、法律に変わる新たな取組基準の設定、B.一斉散布による臭気の面的発生に対応する、酪農場の組織だった取組の誘導、C.取組の実効性を高める、臭気問題の発生リスクに応じた対策、D.酪農場の費用負担力の制約を踏まえた、ハードとソフト両面の対策検討、などが求められる。図1に中標津町で実施した計画策定の枠組を示す。特に2次計画は計画の実践性を高めると同時に、酪農場の組織的取組を促すことを目的として、地域のリ−ダー的酪農場を中心に、役場、農協、普及センター、農試など関連機関の学習会として行う。
- 中標津町における計画策定の実践例では、1次計画の「ゾーン区分案の策定」で、A. 臭気認容性調査に基づき、苦情を出すなど重度の対応行動を示さない臭気基準を臭気強度3未満とし、B. 距離と臭気強度の関係に基づき、問題を引き起こす恐れのあるゾーンを市街地境界から3km以内としている(図2)。ゾーン設定に伴う酪農場の「行動規範案の策定」では、ゾーン内の散布を市街地境界から500m以内を浅層インジェクターで、500m〜3kmをバンドスプレッダーを使用するなどのハード対策を中心とし、ゾーン外では風向の考慮、住民への散布通知等のソフト対策を中心としている。
- 2次計画では、まず「1次計画の検討・修正」として、ゾーン区分案を承認し、また、A. 行動規範案の実行可能性を施設装備状況や費用負担面から検討、B.経験的に臭気抑制的と認識される事項の行動規範案への追加などを行い、行動規範を策定する(表1)。次に「実行計画の策定」として、計画実行に向けた役割分担を具体的に計画する。
- 中標津町の検討では、学習会の意義や今後の取り組みの推進に対し、参画した全ての酪農場が肯定的見解を示した一方で、行動規範案の内容に関しては、詳細な費用負担の整理や全酪農場への啓発活動が課題であると指摘されている。それらを踏まえ、ゾーニング手法による計画策定のガイドラインを表2に整理する。
[成果の活用面・留意点]
- スラリー散布に伴う臭気対策が面的に必要となる場合の、対策計画立案の参考とする。
- ゾーニングの際の臭気基準や距離設定は、地形や気候などの影響を受けるため、適宜臭気問題発生状況を反映した再設定を実施する。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「スラリー散布に伴う臭気問題の発生抑制に向けたゾーニング手法による計画策定」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:畑作・酪農地帯におけるふん尿処理・利用時の臭気低減のための地域システムの構築
予算区分:道費(一般)
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:関口建二、松本武彦、岡田直樹、山田輝也、三枝俊哉、三木直倫、石田亨、舟橋直人、沓澤淳、酒井治、坂下勇一(道立根釧農試)、高橋圭二(現 酪農学園大学)、甲田裕幸、湊啓子、山川政明(道立畜試)
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