ミルキングパーラ排水の分別処理による浄化施設の低コスト化
[要約]
ミルキングパーラから排出される搾乳関連排水のうち、ふん尿系排水は生乳系排水と分別管理し、凝集沈殿法と活性汚泥法を組み合わせ処理することで、水質汚濁防止法・排水基準を満たし、浄化施設の施設費・維持費を低コスト化できる。
[キーワード]
搾乳関連排水、ミルキングパーラ、凝集沈殿処理、低コスト
[担当]道立根釧農試・研究部・酪農施設科
[代表連絡先]電話0153-72-2004
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
ミルキングパーラから排出される搾乳関連排水は、生乳系排水(パイプラインやミルカの洗浄排水)とふん尿系排水(搾乳ストールの洗浄排水)が混合する高負荷排水である。本研究は、双方を分別管理し、ふん尿系排水に対し凝集沈殿法を主体とした浄化処理を行うことで施設の低コスト化と、処理水の水質改善を図る。併せて、浄化施設の稼動状態を把握するための簡易に行える自主的検査方法を示す。
[成果の内容・特徴]
- ミルキングパーラの搾乳ストールを生乳が混入していないプレートクーラ排水等で洗浄作業を行い、生乳系排水が混入しない排水経路とする(図1)。浄化施設の構成は、A.沈殿槽で8時間静置し、排水に含まれる夾雑物を沈殿・分離、B.凝集槽で懸濁物質(主にSS、T-N、T-P、大腸菌群数)を凝集沈殿除去、C.活性汚泥槽(冬季間は加温が必要)で溶解物質(主にCOD、BOD)を分解する3処理工程と、D.小型汚泥濃縮槽で凝集沈殿物の再濃縮(約一日静置)で構成される浄化施設である。各処理槽の容量は、A沈殿槽およびB凝集沈殿槽が洗浄工程1回分、C活性汚泥槽は処理日数2日分以上必要である(図2)。
- ふん尿系排水の汚水原水および各種処理水の水質は、汚水原水では各項目において排水基準を上回っているが、凝集沈殿処理においてSS、T-N、T-P、大腸菌群数、その後の活性汚泥処理においてCOD、BODを低減でき、水質汚濁防止法で定められている排水基準を達成することができる。(表1)
- ふん尿系排水の浄化施設施工費は、試験実施農場規模(搾乳頭数80頭規模、ヘリンボーンパーラ・6頭並列型)では約170万円(浄化施設全体は約380万円)で、ランニングコストは全体で約9.0万円/年(薬品代4.7万円、電気代4.3万円)である(表2)。
- 浄化施設の稼動状態を把握する方法として透視度とpHメータ、簡易COD検査キット(パックテストWAK-COD(H))を用いる。汚水原水の透視度が0.1cm(または沈殿上澄汚水の透視度が0.3cm)以上、凝集沈殿処理は処理水の透視度が20cm以上、活性汚泥処理水はpHが5.8〜8.6、WAK-COD(H)が60mg/L以下であれば本浄化施設の設計範囲内で運用および稼動している(表2)。
[成果の活用面・留意点]
- プレートクーラ排水や水道水等で搾乳ストールを洗浄する酪農場で活用できる。
- ミルキングパーラでは、搾乳ストールおよび側溝も除ふん作業を行う必要がある。また、浄化対象とする汚水原水は透視度が0.1cm以上(沈殿上澄汚水は0.3cm以上)とする。
- 初乳および投薬治療中から搾乳した廃棄乳は浄化対象外である。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「分別処理方式によるミルキングパーラ排水の低コスト浄化施設」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:分別処理方式によるミルキングパーラ排水の低コスト浄化施設
予算区分:道費(重点)
研究期間:2008〜2009年度
研究担当者:大越安吾
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