化学農薬によらない水稲の種子消毒法
[要約]
農薬の使用回数にカウントされない生物農薬、温湯消毒、食酢を活用することで、化学農薬と比較してほぼ同等以上の防除効果が期待できる。また、本技術は有機栽培など化学合成農薬が使用できない場面で特に有効活用できる。
[キーワード]
[担当]道立上川農試・研究部・病虫科、道立中央農試・生産環境部・予察科
[代表連絡先]電話0166-85-2200
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
北海道で主に問題となる水稲の種子伝染性病害は、いもち病、ばか苗病、褐条病および苗立枯細菌病の4病害であり、これらを総合的に種子消毒で防除する必要性がある。有機栽培などで化学合成農薬が使用できない場面やYES!clean栽培などで農薬の使用回数が限られている場面では生物農薬や温湯消毒による種子消毒は欠かせない技術になっており、今後ますます増加すると考えられる。そこで、農薬の使用回数にカウントされない生物農薬、温湯消毒、食酢を活用し、4病害に対してより安定した防除効果のある種子消毒法を開発する。
[成果の内容・特徴]
- 催芽時食酢50倍の単独処理は、褐条病に対し化学農薬と比較すると優る防除効果が得られるが、その他の病害に対し防除効果が十分ではない(図1)。
- 浸種前生物農薬の単独処理は、化学農薬と比較すると十分な防除効果ではないが、催芽時食酢50倍処理と組み合わせることで防除効果が向上し、4病害に対し化学農薬とほぼ同等〜優る防除効果が得られるようになる(図1)。
- 温湯消毒単独処理は、褐条病、苗立枯細菌病に対し十分な防除効果ではないが、催芽時食酢50倍処理と組み合わせることで防除効果が向上し、4病害に対し化学農薬とほぼ同等〜優る防除効果が得られるようになる(図1)。
- 催芽時生物農薬単独処理は、化学農薬と比較すると十分な防除効果ではないが、温湯消毒と組み合わせることで4病害に対し化学農薬とほぼ同等〜優る防除効果が得られるようになる(図1)。
- 浸種前および催芽時に生物農薬、温湯消毒、食酢を目的に応じ組み合わせて使用することにより、化学合成農薬が使用できない場面でも化学農薬とほぼ同等以上の防除効果が得られる(図2、表1)。
[成果の活用面・留意点]
- 本成果は、採種圃以外での水稲の種子伝染性病害に対する防除対策に活用する。
- 本技術は、催芽に循環式催芽器を使用する。
- エコホープDJは、成分に重曹を含んでおり、食酢と中和するので浸種前に処理するよう注意する。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「化学農薬によらない水稲の種子消毒法」(普及推進)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:水稲有機栽培の育苗指針・施肥基準の策定
予算区分:道費(一般)
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:小倉玲奈、美濃健一、白井佳代
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