秋まき小麦品種の赤かび病抵抗性レベルに応じた薬剤防除の考え方
[要約]
抵抗性“強”系統であっても発病穂のDON汚染リスクは高いので、感染防止が必要で、開花時期の薬剤散布が重要である。薬剤散布回数と赤かび病の防除効果を評価し、各抵抗性程度に応じた薬剤防除の考え方を示した。
[キーワード]
[担当]道立十勝農試・生産研究部・病虫科
[代表連絡先]電話0155-62-9812
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]研究・参考
[背景・ねらい]
赤かび病抵抗性程度の異なる秋まき小麦4品種・系統(“強”、“やや強”、“中”、”やや弱”)をモデルに、DON蓄積特性を明らかにするとともに、抵抗性程度に応じた薬剤防除の考え方および散布回数を示す。
[成果の内容・特徴]
- 抵抗性“やや強”の「北見82号」および“強”の「16036」では、赤かび病の発生が少なく、DON濃度も低い傾向を示すことから、赤かび病抵抗性品種の導入はDON汚染リスクの低減に有効である。
- 抵抗性系統であっても赤かび粒には高濃度のDONに汚染されている(図1)。
- 「16036」では発病小穂からの進展は、抵抗性”やや弱”である「ホクシン」と比較して少ない傾向を示すが、発病穂内の外観健全粒のDON濃度については、成熟期になると「16036」は低い試験事例もあったが、逆に高い試験事例もあり、品種・系統間差は判然としなかった(図2)。
- 以上の結果から抵抗性系統であっても発病穂内のDON汚染リスクは高いので、「ホクシン」と同様に最も感染しやすい開花時期の薬剤防除が重要である。
- 抵抗性“中”である「きたほなみ」の1回散布は「ホクシン」の2回散布に比べ防除効果がやや劣る(図3)。
- 「北見82号」では、適期に薬剤散布を行えば、1回散布でも「ホクシン」の2回散布と同等の防除効果が得られる(図3)。
- 「16036」では、無散布でも「ホクシン」の2回散布と比べ同等の発病抑制効果が認められ、1回散布では発病小穗率、赤かび粒率でやや優る防除効果が、DON濃度は同等の防除効果が認められる(図3)。
- 以上の結果から、各抵抗性レベルにおける薬剤散布の基本的な考え方をまとめた(表1)。
[成果の活用面・留意点]
- 赤かび病抵抗性“やや強”の新品種導入の際の薬剤散布の方針として活用できる。
- 抵抗性レベルに応じた薬剤散布の考え方は、本病抵抗性品種育成上の参考となる。
- 本成果は、赤かび病抵抗性程度の異なる4品種・育成系統をモデルとして検討した。
- 本試験は、生育の揃った圃場で、100L/10a、慣行ノズルを用いた条件で薬剤散布を行った。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「秋まき小麦品種の赤かび病抵抗性レベルに応じた薬剤防除の考え方」(研究参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:赤かび病抵抗性新品種・系統のかび毒蓄積特性の解明に基づく、効率的防除技術の開発
予算区分:外部資金(実用技術開発)
研究期間:2006〜2009年度
研究担当者:小澤 徹
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