北海道岩宇地域におけるすいか・メロンの新害虫の発生実態
[要約]
オオタバコガの若齢幼虫は幼葉より花蕾を選択する。ナスハモグリバエと侵入害虫のアシグロハモグリバエを葉の被害様相から明確に識別するのは困難である。エンマコオロギ類はメロンの成熟果を加害する。この加害は、粒剤の生育期マルチ表面散布で軽減できる。
[キーワード]
すいか、メロン、オオタバコガ、ハモグリバエ、エンマコオロギ類
[担当]道原環セ・農業研究科
[代表連絡先]電話 0135-74-3131
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
本地域のオオタバコガによる加害は8月以降の成熟果実に対するものであったが、2007年には6月の着果時期に雌花を次々に食害する被害が発生した。ハモグリバエ類にあっては、道内でアシグロハモグリバエの発生地域が急速に拡大し、本地域への侵入が懸念されている。さらに、コオロギ類によるメロンの成熟果実加害により、商品化率が下がることが問題となっている。このため、主にメロンにおける各種害虫の加害様相を把握するとともに、防除法を検討する。
[成果の内容・特徴]
- オオタバコガのフェロモントラップによる捕獲個体数は2008年1頭、2009年0頭で、おとり植物(ホオズキ)による調査では発生は全く認められなかった。しかし、2007年には本地域でオオタバコガによる被害がみられていることから、オオタバコガの飛来・発生量は年次により変動すると考えられる。
- 飼育条件下のオオタバコガ若齢幼虫は幼葉より花蕾を好み、花蕾に潜り込んで摂食する(図1)。このため、防除に当たっては花蕾を中心に観察し、食害が散見された時点で防除することにより、若齢幼虫に対する防除が可能になると考えられる。
- 共和町の原子力環境センターで圃場で発生したハモグリバエはすべてナスハモグリバエで、侵入害虫のアシグロハモグリバエは確認出来なかった。
- アシグロハモグリバエの被害はナスハモグリバエに比べて葉脈に沿って潜孔する習性が強い(岩崎ら2004)とあるが、放虫による被害再現試験では、ナスハモグリバエとアシグロハモグリバエを葉の被害様相から明確に識別することは困難である(図2)。
- 放虫試験によりエンマコオロギ類(エンマコオロギ、エゾエンマコオロギ)がメロンの成熟果実を加害し、円〜楕円形の穴を開けることが確認された(図3)。
- 殺虫剤(粒剤)の生育期マルチ表面散布により、エンマコオロギ類によるメロン果実への被害が軽減される(表1)。
- 参考資料として、「岩宇地域のメロン主要害虫診断のための写真集」を作製した。
[成果の活用面・留意点]
- 本成績は岩宇地域におけるすいか・メロンの新規害虫の発生実態調査結果である。
- A、B粒剤はメロンのコオロギ類に対して未登録である。
- 参考資料「岩宇地域のメロン主要害虫診断のための写真集」は、生産現場において害虫の診断に利用できる。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「岩宇地域におけるすいか・メロンの新害虫の発生実態」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:岩宇地域におけるすいか・メロンの新害虫に対する防除技術の確立
予算区分:道費
研究期間:2008〜2009年度
研究担当者:奥村 理、大久保利道
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