移植てんさいに対する塩素系肥料利用上の問題点と対応方策
[要約]
塩素系肥料によるてんさいの生育・収量への悪影響は認められず、施肥のうちカリのみを塩素系とし、カリの施肥標準レベル(14〜16 kgK2O/10a)を施用上限量とすれば、茎葉中の塩素が次作のばれいしょデンプン価に影響を及ぼすことはない。
[キーワード]
[担当]道立十勝農試・生産研究部・栽培環境科、道立北見農試・生産研究部・栽培環境科
[代表連絡先]電話0155-62-9837
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
てんさいに対して、従来の硫酸系肥料に替えてより安価で安定供給が見込める塩素系肥料、特に塩化カリ(塩加)の施用効果を検討し、次作ばれいしょのデンプン価の低下等の利用上の問題点とその対応方策を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 塩素含量の異なる施肥処理におけるてんさいの6月下旬〜7月中旬の生育は、硫安塩加区(施肥現物中の塩素含量6%)の草丈が硫安硫加区(塩素含量0%)を上回った他は、葉数、乾物重、葉色値に処理間差は認められず、茎葉の窒素含有率は、塩安塩加区(塩素含量22%)が硫安硫加区を下回ったが、硫安塩加区と硫安硫加区に有意差はない。茎葉の塩素含有率は有意に塩安塩加区>硫安塩加区>硫安硫加区である (表1)。
- てんさいの根重・根中糖分・糖量に処理間差はなく (表2) 、有害性非糖分のカリウムは塩安塩加区および硫安塩加区が硫安硫加区を上回るが、修正糖分および修正糖量に処理間差はない (表3) 。収穫時の葉重は塩安塩加区および硫安塩加区が硫安硫加区を上回る (表2) 。
- 収量調査時の作物体塩素吸収量(茎葉と菜根の合計)の処理区別平均値は、塩安塩加区、硫安塩加区および硫安硫加区でそれぞれ19、16、8kg/10aとなり、その95%以上が茎葉に含まれる (表4) 。
- てんさい収穫跡地土壌の塩素量は、塩安塩加区、硫安塩加区および硫安硫加区でそれぞれ14、9、8mg/100gとなり、塩安塩加区が硫安硫加区を上回る (表4) 。
- ばれいしょのデンプン価およびデンプン収量は、塩加施用量が20 K2O kg/10a以下(塩素施用量として15 kg/10a以下)の範囲では、硫加施用との有意差はない(データ省略)。
- 以上のことから、塩素系肥料による生育・収量への悪影響は認められず、てんさいへの施肥のうちカリのみを塩素系とし、カリの施肥標準レベル(14〜16 kgK2O/10a)を施用上限量とすれば、茎葉中の塩素が次作のばれいしょデンプン価に影響を及ぼすことはない。
[成果の活用面・留意点]
- 移植てんさいにおいてカリ肥料を塩化カリに置き換える際の参考とする。
- カリ施肥量は北海道施肥ガイドに従って適正施肥量を厳守すること。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「移植てんさいに対する塩素系肥料利用上の問題点と対応方策」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:てんさいに対する塩素系肥料の効果確認試験
予算区分:受託
研究期間:2009年度
研究担当者:笛木伸彦、中村隆一、竹内晴信
目次へ戻る