積雪地帯における融雪期のCO2収支は融雪水による移流によって変化する


[要約]

[キーワード]

[担当]北海道農研・寒地温暖化研究チーム
[代表連絡先]電話025-526-3234
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境、北海道農業・生産環境、共通基盤・農業気象
[分類]研究・参考


[背景・ねらい]

[成果の内容・特徴]

  1. 融雪が生じていないときの積雪層底部の気相中のCO2濃度は、大気中の濃度(およそ380ppmv)よりも高く保たれているが、融雪が生じると急激に低下する(図1)
  2. これは積雪層内を流下する融雪水がCO2を溶解して移流するためである。非融雪期間では土壌呼吸によって地表面から積雪層内に入ってきたCO2が積雪層内を拡散して大気に放出されているが、融雪が生じると融雪水によって溶解され積雪層から出ていくる移流フラックスが加わる(図2)
  3. 融雪水によって移流されて積雪層から出ていくCO2のフラックスFwater(gCO2/m2/h)は、融雪速度(単位時間あたりの融雪水量)Vmelt(mm/h)、および積雪層底部の気相中CO2濃度Csnow(gCO2/m3)より、 Fwater=K×Csnow×Vmelt/1000 という式で推定することができる。ここで、溶解の効率に関する係数K(無次元)は、融雪速度の関数として K=aVmelt-2/3+b と表わされる。これは融雪水の流下速度が融雪速度のおおむね2/3乗に比例することを反映したものである。係数のaおよびbは積雪粒径や密度などによって変化し、KはVmelt<3mm/h程度の範囲では8〜20程度の値となる。
  4. 融雪水に移流されるフラックスの大きさは土壌呼吸のフラックス、拡散によって大気に放出されるフラックスと同程度のオーダーである(図3)
  5. 融雪水によって移流されるフラックスと、拡散によって大気に放出されるフラックスとをどちらも用いて積雪層内のCO2収支を計算すると、実測値とよく一致する(図4)

[成果の活用面・留意点]

  1. 積雪地帯の農耕地におけるCO 2 の動態を把握する際に、融雪水による影響を考慮するための参考となる。
  2. 重粘土地帯水田の表面排水における観測によるものなので、透水性の良い土壌地帯への適用には注意が必要である。また、暗渠排水中の溶存CO2については未検討である。
  3. 積雪量や時期、融雪速度が大きく異なる地域では、係数aおよびbの値は別途検討する必要がある。

[具体的データ]

[その他]




目次へ戻る