ゲル化ドロップレットガラス化法によるばれいしょ培養茎頂の超低温保存法
[要約]
ドロップレット法を改良したゲル化ドロップレットガラス化法は、操作性に優れ、生存率が高く、全ての処理を室温(25℃)で実施することが可能で、ばれいしょ栽培品種・系統、野生種を安定して超低温保存することが可能である。
[キーワード]
ゲル化ドロップレットガラス化法、PVS2液、脱水耐性向上処理、ばれいしょ
[担当]道立中央農試・基盤研究部・細胞育種科
[代表連絡先]電話0123-89-2001
[区分]北海道農業・生物工学
[分類]研究・参考
[背景・ねらい]
アルミホイル上に微量の10%DMSOを含む培地とその培地で前培養した茎頂を置き、液体窒素中で急速に冷却するドロップレット法をばれいしょの培養茎頂に適用し、その問題点を明らかにすると共に、操作性(処理に要する時間や茎頂に直接触れる回数など)、生存率(加温、再培養3週間後に正常な茎葉を伸長した茎頂の割合)に優れた実用的な超低温保存の諸条件を確立する。確立した手法(ゲル化ドロップレットガラス化法と命名)を、多くのばれいしょ栽培種や野生種に適用し、その優位性を確認する。
[成果の内容・特徴]
- 従来のドロップレット法の操作性をアルギン酸ナトリウム溶液のドロップレット内に茎頂を固定することで改良したゲル化ドロップレットガラス化法 (図1)は、超低温保存後の生存率が高く、全ての処理を室温(25℃)で実施することが可能である。
- 室温(25℃)におけるゲル化ドロップレットガラス化法、ドロップレット法、ドロップレットガラス化法と従来の手法(ガラス化法、ビーズガラス化法)により超低温保存したばれいしょ「男爵薯」の生存率は、ゲル化ドロップレットガラス化法とドロップレットガラス化法は同程度に高く、ガラス化法、ビーズガラス化法は低く、ドロップレット法では生存する個体は得られない (図2右)。これは温度降下速度 (図2左)や不十分な脱水と脱水耐性向上処理が原因である。
- これら5手法の操作性を比較した結果、ゲル化ドロップレットガラス化法はビーズガラス化法と同程度であるが、他の手法では茎頂の取り扱いに時間を要する。
- 室温で実施したゲル化ドロップレットガラス化法は、脱水耐性向上処理条件、脱水時間を変えることで、供試した26点のばれいしょ栽培品種・系統の内24点で60%以上の生存率を示す (図3)。また、本手法により超低温保存した6点の野生種は、5点で60%以上、1点で約40%の生存率を示す。
[成果の活用面・留意点]
- ゲル化ドロップレットガラス化法はほ場で保存されているばれいしょ遺伝資源の実用的な長期安定保存に寄与できる。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「ゲル化ドロップレットガラス化法によるばれいしょ培養茎頂の超低温保存法」(研究参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:ドロップレット法によるイモ類培養茎頂の超低温保存
予算区分:外部資金(ジーンバンク事業)
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:平井 泰
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